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最終更新日:2020年07月03日
最終更新日:2020年07月03日
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第546話「おぼえてますよ」

二次会が終わったところでAが言った。
「なかなか渋いバーを見つけたから一緒に行こう」まだ時間も早かったので、僕はAの誘いに乗る事にした。
裏路地の薄暗く狭い道を少し歩くと店に到着した。
まるで映画にでも出てきそうな店内は、静かにジャズが流れ、60前後と思われるマスターらしき男性が一人、カウンターの中でグラスを磨いて
いた。どこかで会った様な気がする。
僕等二人はカウンターの席に座ると、マスターは静かな声で「いらっしゃいませ」と言った。
僕等はそれぞれ飲み物を注文したが、こういう店では何を話せばいいのだろう。
そう考えながら、僕はマスターに声をかけた。
「マスター渋いですね。昔はモテたでしょう?」マスターはグラスを磨く手をピタリと止めると言った。
「昔?昔ですか?」
「あ、いや、今もかな」
「今は昔、竹取の翁というものありけり・・」何故かマスターは竹取物語の一節を語り出した。呆気に取られる僕等。何なんだこの人。
全て語り終えると、マスターは口角を少し上げて小さくお辞儀をした。その何とも言い難い威圧に押され、僕等は自然と拍手をした。
「高校の時におぼえたんですよ。私、記憶力だけは良いんです。おぼえてますよ。お客様は二度目のご来店ですね」とマスターが僕を見る。
「お前来たことあんの?」驚いた顔で僕を見るA。
「えっ?初めてだけど」
「いえ、十年前に一度、それも大雪の晩に、とても体格の良い同僚の方とご一緒でした」僕は慌てて薄っぺらな記憶の層をペラペラと捲り、ようや
く思い出した。
「そうだ!来た来た。大雪の日、でもあの時だけですよね」僕が驚くと、マスターは満足気な顔で頷いた。
それから約一ヶ月後、僕は別の友達とそのバーへ行った。僕等が席に着くと、マスターが僕に言った。
「おぼえてますよ。十年前に一度ご来店頂いたことがございましたね」
どうやらマスターは十年以上前の事しか覚えていない様だ。

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