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最終更新日:2024年04月19日
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第113話 「3年越しの初任給③」

用事があって友達の家へ行った。奥さんが中学生の息子に説教をしている最中だった。父親である友達はそちらに参加せず、僕と話しをしている。
僕が社会人になって直ぐに作ったクレジットカードの引落銀行に、母は毎月小遣いとして三万円を入金してくれた。今は便利な世の中で、パソコン一台あれば、好きな物が何でも買える。その他に床屋代として毎月五千円がドアの外に置いてある。合計三万五千円。
今月からは入金額が一万円減ったが、僕にとって大した問題じゃなかった。
一ヵ月後「週刊求人」を見て父の仕事が決まった様だったが、正社員ではないらしい。あの歳では正社員は厳しいだろうと思っていた。毎週僕も、父が読み古した「週刊求人」を見ていた。紙面をネットで見られる事も分り、毎週月曜日が楽しみになった。今迄曜日の感覚すらなかった僕にとって、大きな生活の変化になった。
ある日の事、母が僕宛に届いたと言って、ドアの前に封筒を置いて行った。中を開けると、千円分の商品券が入っていた。飛び上がるほど嬉しかった。僕が三年振りに自分で手に入れたお金である。商品券を封筒に入れると、次の日、一階にある食卓のテーブールの上に「何かの足しにして下さい」と書いたメモと一緒に商品券を置いた。
その日、夕食を持って来た母はとても喜んで言った。
「凄いね、きゅうじん君見つけたんだね。毎週お父さんと二人で探してるんだけど見つけられなかったんだよ。商品券ありがとう。大事に使わせて貰うからね」
ありがとうって最後に言われたの何時だっけ?こんなに気持ちが良い言葉だったっけ?僕は言葉の余韻に暫く酔いしれた。この時、これが母の僕に対しての最後の言葉になるなんて、夢にも思わなかった。
次の日の午後五時過ぎ、僕の携帯に母から電話が掛って来た。ゲームに忙しくてそれどころでは無く、僕は無視した。どうせ今晩のおかずの事だろう。暫くして今度は父から電話が来た。瞬間にただ事では無いと感じ、急いで電話に出た。
「母さんが・・・死んだ」
僕は無我夢中で、床屋代として貰ってあった五千札を握り締め、タクシーに乗り込んだ。

つづく

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