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最終更新日:2024年03月28日
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第115話 「3年越しの初任給⑤」

 社長は僕の肩にポンと右手を乗せ、静かに言った。
「このカーペットの染みは、このままにしておくよ。この染みが君の再スタートの印だ。お母さんの為にも今日という日を忘れちゃいけない。明日から頼むよ」
この瞬間、僕は存在しないだろうと思っていた人生のリセットスイッチを押した。
父と一緒に母の遺品を整理してると、僕が書いたメモと一緒に商品券が出て来た。それを父が見て言った。
「ほら、三年前にお前が就職した時、初任給が出たら、母さんにバッグ買ってやるって約束してたの憶えてるか?確か俺にはネクタイだったっけ?その事を母さん覚えてたんだよ。でも給料を一回も手にする事なく、お前は会社を辞めた。お前に商品券を貰った晩に、お前がもう一度就職をしたら、記念にこの商品券を使おうって言ってたんだ」
「俺・・・母さんとの約束果たせなかった・・・」
「いや、今度初任給を貰ったら母さんにバッグ買ってやれ、それが母さんへの何よりの供養だ」父の目には涙が浮かんでいた。
待望の初任給。僕は姉さんと一緒に母の好みと思われるバッグを買った。もうネクタイを使う事がなくなった父には、財布を買った。バッグは一ケ月程仏壇に供え、その後、母の形見として姉に渡した。
それから一年が経ち、母の命日に僕は手紙を書いた。仏壇の前とはいえ、口に出して言うのが照れくさかったからだ。
(俺、来年結婚する事に決めたよ。今度、母さんにも紹介するからさ、母さんと同じくらい優しい人だよ。母さんは何時も優しかったよね。でも思うんだ。自分自身が強くないと人には優しく出来ないんじゃないかってさ。俺も強くなるよ。そして優しい人になりたいな。母さんの様にね。)
今では恋人もでき、理解ある上司と、同僚にも恵まれ、社会人としての生活を楽しんでいる。これからは自分の為、家族の為、恋人の為、会社の為、僕にまつわる全ての人達の為、強く強く生きて行こうと思う。
人に優しくできる様に。

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