求人君

北海道【札幌・旭川・函館・苫小牧・釧路・帯広】のお仕事探しに求人君
最終更新日:2024年03月29日
最終更新日:2024年03月29日
TOP  > KonなんどうでShow!  > 第143話 「本屋のおばさん」前編

第143話 「本屋のおばさん」前編

子どもの頃、ある本屋で文庫本を買おうとした。
以前に病院の待合室で、上着のポケットから文庫本を取り出して読んでる人を見て、文庫本って大人ぽくてカッコいいと思った。
親にせがむと、まだ早いの一言で一蹴された。それ以来文庫本は僕の憧れだった。
レジには中年のおばさんが居た。
「本が好きなんだね。この前の本はもう読んだの?」
「はい」これが僕とおばさんの初めての会話だった。
「どうだった?面白かったかい?」
「うん。面白かったよ」
「そう、でも今回のはどうかな?習ってない漢字もたくさんあるし、あまり子どもにはお勧めできないな」
「でも、それ来年の夏に映画でやるし、面白そうなんで読んで見たいんだ」
「帯に来月ロードショウって書いてあるもんね」
「それじゃ、おばさんもこの本を読んで見るから、感想を言いっこしようか?でも、まだ早い様な気がするけどな」
おばさんはこう言うと、文庫本にカバーをつけてくれた。
僕はお金を払うと、『ジョーズ』の文庫本を手に店を出た。
家に着き、早速読もうとしたが、文字が小さく挿絵も無い。その上解らない漢字ばかりで一向に進まかった。
でも、おばさんとの約束を破るわけには行かない。
僕は国語辞典を側に置き、文庫本を読んだ。
一度調べただけでは、また出て来た時に思い出せないので、ノートに漢字を書き、かなをふって憶えて行った。
最初は漢字だけで良いと思っていたが、読めても意味が解らない。それで意味も書いて行く。
本のページは進まないが、ノートのページ数はどんどん増えて行った。
ちょうど冬休みの期間中と言う事もあり、僕はこの作業を毎日続けた。
こうして僕の文庫本デビューは読書にはほど遠いものとなった。
友達の誘いもほとんど断り、僕の小学校四年生の冬休みは『ジョーズ』との戦いに明け暮れた。
そして冬休み残りわずかで思い出した。
「あっ!宿題!」

つづく

エリア
カテゴリ
こだわり
雇用形態