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最終更新日:2024年04月19日
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第145話 「本屋のおばさん」後編

その後もよく本屋へ通っては、おばさんお勧めの本を読んで何故かしら読書感想文を書いて提出していた。
やがて僕も中学生になり、部活やら何やらで本屋への足も遠のく様になった。
ある日の事、久しぶりにおばさんの居る本屋に僕は顔を出した。
「久しぶりね。まだ本は読んでるの?」
ニッコリ笑っておばさんが言った。
「最近あまり読んでないんだ。部活やってると疲れちゃってさ」
「そう、人生は長いんだし、本はいつでも読めるから、今しか出来ない事を一生懸命やった方が良いわね」と言った後で、おばさんは寂しそうな顔で言った。
「おばさんね、今週でここのお仕事辞める事になったの。今まで有難うね。おばさん君の感想文を読むのが何より楽しみだったんだ」と言って今迄の僕の感想文を綴った物をレジのカウンターの下から取り出した。
「凄いでしょう。君ぐらいの歳で、こんなに本を読んだ子ってちょっと居ないんじゃないかな」
渡された冊子を見ると、僕が書いた感想文に対して、おばさんの意見が赤ペンで書いてあった。
誤字脱字も赤ペンでチェックされている。
「おばさんって先生見たいだね。でも楽しかったよ。結構怒られたりしたけどね。今まで有難うございました。感想文から開放されたのは、 少し嬉しいけど、おばさんと会えないのは寂しいな」
「人生は小説より奇なりって言ってね。また何処かで会うかも知れないよ」
そう言うと、おばさんはニッコリ笑うと右手を差し出した。
僕はおばさんと握手をすると冊子を受け取り店を出た。
それから一年程が経った。
国語の先生が産休になり、代わりに臨時の先生がやって来た。
顔を見て僕は驚いた。それは、本屋のおばさんだったのだ。
先生は自己紹介を済ませると、僕の方にやって来てこう言った。
「人生は・・・」と言い掛けた時、「小説より奇なりでしょ」と僕が言うと、おばさんはニッコリ笑って右手を僕に差し出した。

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