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最終更新日:2024年04月19日
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第172話 「鬼(き)っ子」前編

正月に叔父の家へ行った。
玄関の両脇には、前日降った際の雪が積まれ、その雪は計った様に同じ高さに積んである。あれ程いい加減な人間なのに、仕事に関しては信じられない程真面目で几帳面なのだ。
「義則が帰って来てるんだ。絹子も一緒にな」正月でほろ酔い状態の叔父が言った。
お嫁さんの絹子さんを僕らは、きっ子ちゃんと呼んでいた。
二人に会うのは十年振りだったが、気が重かった。その時、僕の気持ちを察した様に叔父が言った。
「覚悟は出来てるんだべ?」
絹子という名前を、以前叔父が婆さんみたいな名前だと言ったら、大喧嘩になった事があった。
美人ではあるが、薩摩おごじょだけあって気の強さは天下一品である。
でも強いのは気だけではない・・・。
叔母の手料理を食べながら酒を呑み、昔話しをしていると、外はいつの間にか雪が激しく降りだした。
「あっ、雪だ!」
鹿児島育ちのきっ子ちゃんが嬉しそうに窓の外を見て言った。
「少し雪掻きでもして来るか」と言って叔父が立ち上がると、きっ子ちゃんも楽しそうに叔父の後を付いて行った。
ベランダ越しに叔父達を見ると、早速玄関先で喧嘩が始まった。
「そこに積んだらダメだって言ってるべや!お前、邪魔だから家に入ってれ!」
「だって雪掻きってやった事ないから、楽しいんだもん」
こんな調子で暫くの間騒がしかったが、叔母が二人に缶ビールを持って行くと、急に静かになった。
「雪掻きって結構汗かくべ」
「そうね。冬の運動不足にはもって来いかもね。じゃ、お父さん、カンパ~イ」
「おう!」と言って玄関先の階段に二人仲良く座って、ビールを飲んでいる。
「喧嘩ばかりしてるけど、あの二人、結構仲良いんじゃないの?」僕が言った。
「そうなんだ。あいつも男勝りだからさ、親父と喧嘩はよくするんだけど、ちょっと時間が経つとあんな感じでさ」と夫のよっちゃんが二人の様子を見て言うと、「喧嘩する程仲が良いってやつじゃない?」叔母が笑いながら言った。

つづく

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