求人君

北海道【札幌・旭川・函館・苫小牧・釧路・帯広】のお仕事探しに求人君
最終更新日:2024年04月18日
最終更新日:2024年04月18日
TOP  > KonなんどうでShow!  > 第173話 「鬼(き)っ子」後編

第173話 「鬼(き)っ子」後編

雪掻きを終えて叔父ときっ子ちゃんが戻って来た。
「さあ、今日は正月だし、これからゆっくりと酒でも呑むか、なあ絹子」
「美味しい焼酎たくさん買って来たから、皆で呑もうよ」嬉しそうに話すきっ子ちゃん。
早速土産の焼酎の詮を抜くと叔父に注いだ。
「ほう、美味いなこれ」
「『魔王』って焼酎。最近は手に入り易くなったけど、昔は幻の焼酎って言われてたほど手に入らなかったんだよ」
この時、十年前の記憶が僕の脳裏をかすめた。
「今日はもう帰ろうかな。沢山ご馳走になった事・・」と迄僕が言いかけた時、叔父と息子のよっちゃんが僕の両腕をがっちりと掴んだ。
「まだいいじゃん。久し振りに会ったんだし」と、よっちゃん。
顔は笑っているが、目が笑ってない。
「お前、こんな子供騙しみたいな酒で今日は帰れると思ってるのか?」
耳元で囁く様に叔父が言うと、二人はねじ伏せる様に僕を座らせた。
きっ子ちゃんは、この日の為に少しずつ焼酎を買いだめし、先に宅急便で送ったそうで、全部で二十四本あるとの事。
嬉しそうに『魔王』のボトルを握り締め、微笑むきっ子ちゃんだったが、この時のきっ子ちゃんは僕には『魔王』に見えた。
こうして十年振りの地獄の酒盛りが始まった。
全て芋焼酎で勿論、ロック。
『魔王』『森伊造』『村尾』でよっちゃんが潰れた。
続いて『花と蝶』『くじら』で僕が潰れた。
その後、叔父も何本かボトルを開けた後、善戦空しく撃沈された。
一番先に潰れたよっちゃんはトイレから出て来ない。
「北海道の男どもは、ほんのこて、情けなかね。お母さん。ずんばい呑みましょ」
「そうだね。男どもは放っておいて女同士で飲もうか」
化け物同士の宴会は続いた。
横で酔い潰れている叔父のイビキで目が覚めた。
昼間から呑んでいたが、いつの間にか外は真っ暗だった。
「おっ、起きた。二次会だ二次会」と言って二本目の『魔王』を握りしめ、満面の笑みをうかべながら、目のすわったきっ子(鬼っ子)ちゃんがにじり寄って来た。
僕の記憶はここで途切れた。

エリア
カテゴリ
こだわり
雇用形態