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最終更新日:2024年04月19日
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第179話 「高橋君」

「高橋く~ん。あ~そ~ぼ」
日曜日の朝、インターホンから子どもの声が聞こえた。
夢を見たのかと思い、寝返りを打って再び眠りにつこうとすると、また子どもの声がした。
「高橋く~ん。あ~そ~ぼ」
家には小さな子どもは居ないし、僕は高橋君じゃない。
「居ないの~?約束通り遊びに来たんだよ」
放っておけば、その内間違いに気付くだろうと思い、無視を続けたが、どうにも収まりそうにない。
「高橋く~ん。あ~そ~ぼ」
「居ないの?」
「まだ寝てるじゃないか?」
子どもは三人居る様だった。
「今度はもっとでっかい声で三人一緒に呼んでみるか。行くぞ!せーのーで、高橋く~ん!あ~そ~ぼ!」
もう限界である。
日曜日の朝、暖かい布団でいつもより少し長めに眠る小さな幸せ。そんな至福の時をどっかのガキどもに邪魔される筋合いはない。
僕はベッドから飛び起きると、一気に階段を駆け下りた。
玄関のドアノブに手を掛けようとした時、ドアの外から声が聞こえて来た。
「そっちじゃないよ。こっちこっち」高橋君の様だ。
「地図違うじゃん」と友達。
「ご免、間違えた」
そう言えば、道路を隔てた向いの家、何日か前に引越しの挨拶に来てたっけ。
高橋って言ってたな。
そこの子か、転校して来たばかりで地図を書いて友達に渡したけど、その地図が間違ってたって事か。
そう思うと何故かほほえましく思えた。
ドアを静かに開けると、途中まで高橋さんの家に向かって走っていた子が一人こちらに気付いて戻って来た。
「ピンポン鳴らしてご免なさい。間違えちゃいました」
「いんだよ。そこの通りは車が多いから、注意して渡るんだよ」
と言って優しい近所のおじさんを演じて僕は玄関のドアを閉めた。
時計を見ると、もう少し眠れそうだ。
ベッドの中でうとうとしかけていると、また玄関のチャイムが鳴った。
「お早うございます。佐藤です。奥さ~ん!お家見たくて遊びに来ちゃった~」

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