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最終更新日:2024年04月19日
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第182話 「再会」

僕が、ある食品会社でアルバイトをしていた時の事。
責任感があり、部下の面倒見も良くて、皆に慕われている課長がいた。問題があるとすれば、顔が恐ろしく怖い。街中を課長が歩くと、向こうから来る人は皆、目を伏せて道を譲る。人の波が課長を中心に左右に割れるのだ。海が真っ二つに割れる十戒の映画シーンを彷彿させる場面を何度も見た。
「俺の顔って怖いか?」
「はい、めちゃくちゃ怖いです。でも人って顔じゃないんだって思いました」
「君は素直だな」と言って笑った後に、顔が原因で子どもの頃、よくいじめられた話しをしてくれた。
「ある時、親父の転勤で転向する事になってな、その時これはチャンスだって思ったんだ。転向先でこの顔みたいに本当に怖い人間になれば良いんだって思った訳よ。少し悪ぶっただけで皆一目置く様になったんだ。でも最初はびくびくだったよ。ハッタリが見抜かれないかってな。でもそんな心配は全然なくて、友達も沢山できて、楽しく学生生活を送る事が出来た。別に不良になった訳でもないのに、何でいじめられなくなったのか、今になって考えてみると、悪ぶってたって思ってた事がそうじゃなかったんだよ。何だと思う?」
僕は頭を斜めに傾げた。
「自信なんだ。周りの人間は皆、俺が自分に自信を持って生きるって勘違いしてたんだ。それで初めて皆が認めてくれる様になったんだ。人って自信のない人間を見抜くもんなんだよ。そしてそこに付け入って来る人間がいるって事。君はまだ仕事をして間もないけど、多少ハッタリでも良いから自信を持って仕事をして行くと良いよ。結果は後から付いて来るもんだから」
こんな昔話を思い出しながら、待ち合わせの料理屋にいると、怖い顔をした男性が側へ寄って来た。
「社長就任おめでとうございます」と言って僕は頭を下げた。
男性はニッコリ微笑んで会釈すると言った。
「俺の顔、まだ怖いか?」
「はい、めちゃくちゃ怖いです」
十五年ぶりの再会だった。

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