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最終更新日:2024年04月19日
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第191話 「専業主夫1」

入社してから二十年。会社の業績が落ちて来ているのは当然分かっていた事だが、まさか自分がリストラされるとは夢にも思っていなかった。
重い足取りで家に入ると、高一の娘と中一の息子が、珍しく食卓に着いていた。
「お帰りなさ~い」
暫く目にしていなかった光景に驚いていると、笑顔で娘が言った。
「凄いんだよ~。お母さん来月から課長になるんだってさ」
「課長?昇進したのか」
思わず私は興奮した口調で台所の奥にいる妻に言った。
「課長って、お父さんと一緒だよね。今日はお祝いなんだ」息子が言った。
「凄いな、おめでとう。良かったじゃないか」
「うん、ありがとう。でもこれから大変だよ」
「家の事は私が頑張るから仕事頑張ってね」と娘。
こんな状況でリストラの話しなんかできるはずが無い。
折角のご馳走を見ても全く食欲がわかなかった。子ども達が部屋に戻った深夜、私は妻に話すことにした。
「でも、逆に良かったじゃない。部下にリストラを言い渡す方が辛いわよ。暫くは何とか私が家計を支えて行くから、あなたは今迄の疲れを取る意味でも暫く休養した方がいいわよ」
妻に感謝しながら、私は言葉に甘える事にした。
退職してから、ちょうど一週間が過ぎた。
朝七時に起きて、犬の散歩をし、庭の手入れをするのが最近の日課となっていた。
今迄、あくせく働いていた頃とは違い、時間の流れがゆっくりと感じられる。ここ十年ほど前から見る事の無かった庭も、良く見ると随分様変わりをしていた。
妻か娘が植えのか、綺麗な花が沢山咲いている。久し振りに心が和む。こういう時間も人生には大切なんだと、改めて感じていると、妻が慌しく帰って来て言った。
「暇があるんだったら少し家の中くらい片付けてくれてもいんじゃないの?」
急に現実に引き戻されたのと同時に、何故か腹が立った。
「俺だって、色々忙しいんだ!仕事だって探さなきゃなんないし」
つづく

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