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最終更新日:2024年04月19日
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第203話 「潔さ」

テレビニュースを見ながら祖父が言った。
「これは行政の怠慢だろ。三十年以上も前に死んでるのを役場が知らんで年金を払い続けてたってんだから」
「それにしても自分の親が死んでも葬式も出さないで、年金貰い続けるって、世も末だよな」と僕。
「おっ、お前いい事言うな。俺が死んでもちゃんと葬式上げてくれるってことだな」
「多分ね」
「多分ってなんだ」
「俺はじいちゃんの孫だからさ、葬式は親父が出すんじゃないか?」
「あいつか・・・ちょっと心配だな」
「まあ、まだまだ先の話だろうけど」
「何でそう言い切れる?俺だってもう八十近いんだから何時ころっと逝くか分からんぞ」
「大丈夫だって、憎まれっ子世に何とかって言うだろ」
「ふん!悔しいけどお前の言う通りかも知れん」
「おっ、自分の事をその歳で大分理解出来る様になったんだな、じいちゃんも」
「ふん!孫には悪たれつかれるし、長生きしたって何も良い事ないな。自分で死ぬわけにもいかんし、早く婆さんが迎えに来ないかな」
「ばあちゃんだってあの世で、じいちゃんが居ない分伸び伸びと楽しくやってるんじゃないか?」
「いや、きっと寂しがってるさ。でも、最近思うんだ」
「うん?何を」
「死についてだ」
「何だよ、随分とシビアなテーマだな今度は」
「死ぬ時ぐらいは静かで潔くありたいもんだってな」
その時だった、地鳴りと共に大きく家が揺れだした。
「おい!地震だぞ地震!」
「分かってるって」と僕は言ったものの、結構な大きさだった。
「大きいぞこりゃ」と言うと祖父は大急ぎで部屋から出て行った。
早速、地震の情報がテレビの画面にテロップで流れる。
「親父どうしたんだ?」外で庭仕事をしていた父が入って来て言った。
「今の地震で慌ててたけど、どうかした?」と僕。
「頭に座布団被って、裸足で外に飛び出して行ったぞ」

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