会社の後輩Ａがスノーボードを買った。
初めてだったが、簡単に乗る事ができたと自慢げに言った。
結構苦労して覚えた我々は、この言葉にカチンと来た。
早速、目に物見せてくれると意気込み、Ａを誘うと次の日曜日に会社の仲間数人でゲレンデへと向かった。
スノーボード歴が長い我々は、初心者のＡを尻目に、どんどん先へと滑って行く。
Ａが「待って下さい」と泣き言を言う迄。
しかし、転びまくり、雪まみれになり、肩でゼイゼイ息を切りながらも、何とかＡはついて来る。
その様子を見た一人が、勝ち誇った様子で言った。
「どうだ？結構難しいだろ。　ちょっと休むか？」と聞く。
「いえ、全然疲れてなんかいないです」とＡは笑顔で答える。
泣き言を期待して掛けた言葉に、思いがけない返答で、更にヒートアップする。が、ここで大変な事に気づく。我々の年齢による体力の衰えを計算していなかったのだ。
膝が、ガクガクし出した。明らかに飛ばし過ぎである。若いＡは相変わらず、転がりながらも笑顔でついて来る。
気がつくと体制は逆転。「やっぱりこうなりましたね。皆さん少し飛ばし過ぎですよ」と薄ら笑いを浮かべて我々を置いて颯爽と滑るＡ。かなり上達している。
悔しいがもう遅い。「Ａく～ん待ってくれ～」勿論、引きつりながらも笑顔だけは忘れない。