エコポイントが半減になる為、来年からの地デジ放送を控え、テレビが売れに売れている様だ。
「昨日、テレビを買いに行ったら電器屋が凄い事になってた」Ａが言った。
「新聞にも載ってたけど、納品が三ヵ月後とかになっちゃう人もいる見たいだな」Ｂが言った。
「そうなんだよ。うちの場合は来月に納品らしいけど、人気の機種とかは、そう見たいだな」
「でも、不景気だ何だっていっても、みんな金持ってるんだな」とＢが言う。
「そうでもないぞ。見てたら殆どカードだったから」
「お前もか？」とＢ。
「もちろん。カードだよ。ボーナスを見込んでの決済だけどな」
「ボーナス一括払いってやつだな」と僕。
「今年も景気が悪いから大して期待はできないけどな」
「まだボーナスが出るだけ良いじゃん。うちの会社なんて三年前からボーナス無しだぞ」Ｂが言った。
「ところで、テレビは何を買ったんだ？」と僕。
「シャープのクアトロンを買った。黄色の発色が綺麗に出てたから」
「あれ、高いよな」と僕。
「どうせなら３Ｄにすれば良かったのに」とＢ。
「メガネがわずらわしいし、脳に悪いって何かで読んだからやめたんだ。子どもが今以上に頭悪くなっても困るしな」と言って笑うＡ。
「だけど、お前んとこはどうなのよ？景気は」とＢ。
「良くないな。最悪だ」
「それでボーナスは大丈夫なのか？」僕が聞いた。
「いくら何でもテレビ代ぐらいは出るだろうよ」
次に日、Ａの会社では社長から全社員にボーナス全面カットの報告がされた。皮算用して買ったテレビの事を思い出し、青ざめるＡ。その事を同僚に話すと、社長の耳にも入った様で、社長がＡに話しかけて来た。
「ボーナスを見込んでテレビ買ったんだって？」
「はい、景気が悪いなりにもテレビ代ぐらいは出るかなって思ってたんですけど、甘かった見たいですね」
「何だ、テレビ台か、台ぐらい何とかなるだろう」