会社での昼休み、山本が少し沈んだ様子だった。
「どうした？元気ないな」羽賀が声を掛けた。
「何だよ、仕事の事か？」
「いえ、個人的な事で・・」
「あっ、彼女の事だろ？」
「まあ、そうなんすけどね」
「お前の彼女って美人だけど、気が強そうだもんな」
「そうなんすよね」
「将来一緒になるんだろ？」
「はい、そのつもりではいるんすけどね」
「お前ね、贅沢言ってるんじゃないよ。あんなべっぴんは、なかなか居るもんじゃないよ。天は二物を与えずって言うだろ、多少の欠点は目をつぶらなきゃだめだって」
山本は昨日の彼女との出来事を話した。
「ありゃ～、そりゃちょっと酷いな。結婚するんだったら、今からちゃんと躾けておいた方が良いぞ」
「羽賀さんも結婚する前に躾けをしたんすか？」
「当たり前だろ、俺に合う女にちゃんと躾けてから結婚したんだよ」
「そうなんすか。で、どうすれば良いんすか？」
「ど、どうすればって・・そりゃお前、ケースバイケースだけど・・・」
「じゃ、ここだけはしっかり躾けておくべきだっていう何か共通点見たいなものってないんすか？」
「良い質問ですね～。良いですか、彼女が要望する事全てに応えてはいけないっていう事です。全部やってしまうと、それが当たり前だって思ってしまうんです」
「何で池上彰なんすか」
「あまり我がままにしないって事だな。言うべき事は例え喧嘩になっても良いから言わなきゃダメだ」
「でも、喧嘩になってもって・・結構怖いんすよ、僕の彼女って・・」
その時、羽賀の携帯が鳴った。
「あんた！帰って来る時にミリン買って来て！○○スーパーで安売りしてるからさ、一人二本迄だから、ちゃんと二本買って来るんだよ」
奥さんからだった。
「○○スーパーって家とは反対の方角なんだけど・・」
「いいから買って来て！」
電話は一方的に切れた。
「今の奥さんっすよね」
「えっ？・・・聞こえた？」
「はい全部。はっきりと」