社内で羽賀が言った。
「年金より生活保護の方が多く金を貰えるって何か変じゃないか？」
「元からこの国は変な事だらけっすよ」山本が言った。
「そうだけどさ、年金って毎月俺達の給料から差し引かれてる訳だろ？」
「そうっすね」
「だったらさ、将来貰えるかどうか判らない年金なんて払わないで、老後は生活保護を受けた方が得じゃん」
「そうっすね。でも年金と保険料ってセットっすから、何か病気とかになったら保険が効かないっすよ」
「そうなんだよな。やり方がずるいよな。俺達の年金を散々無駄使いしておいて、足りなくなったからって、受給年齢を引き上げたり、減額したりしてさ、それでもって誰も責任取らないってどういう事だ？」
「そうっすね。他の国だったら暴動起きてますよね」
「日本人は大人しいからさ、国も舐めてんだな。子ども手当てだって、まだどうなるか判らないんだろ？もうぐちゃぐちゃだよな。特に鳩ポッポの頃から余計悪くなって今じゃスッカラ菅だ」
「どうしたんすか？急にそんな事言い出して」
「俺さ、坂本竜馬を読んでるんだ」
「えっ？漫画っすか？」
「いや、司馬遼太郎のだよ」
「どうしたんすか？漫画しか読まない羽賀さんが・・」
「何だかすっかりはまっちゃって、面白いの何のって」
「幕末物読んでるんすか」
「そうなんだ。坂本竜馬とか、高杉晋作見たいな人が今の日本に居てくれれば、もっと変わるんだろうな」
「坂本竜馬が今の世の中を見たら何て言いますかね」
「多分、日本の夜明けは遠いぜよ。って言うだろうな」
「でも何で竜馬なんすか？」
「いや、息子にな、坂本竜馬って何をした人？って聞かれてな、苦し紛れに、日本で初めて靴を履いた人って言ったら、何か馬鹿にした様な顔されてさ、それから読んでるんだよ」
それから何日かして羽賀の息子が聞いた。
「伊藤博文って知ってる？」
「昔しの千円札の人だろ」
この後、羽賀の読む本がまた一冊増える事になった。