ガソリン代も高くなったので、女子社員が自転車で出社する様になった。
「帰りに雨が降ってたらどうするの？」山本が聞いた。
「家はそんなに遠くないから歩いて帰りますよ」
「じゃ、次の日は歩いて出勤？」
「そうですね。自転車があるから車じゃ来れないし、歩いて来ますよ。健康の為にもなりますしね」
「もし、歩いて帰るの嫌な時は遠慮なく言ってね。送って行くからさ」
「有難うございます。その時はよろしくお願いします」
「良いのか？こいつの車になんか乗って、家じゃなくてホテルに行っちゃうかも知れないぞ」羽賀が言った。
「誰かさんと違って山本さんは、紳士ですから」
「こういう紳士面したのが一番危ないんだぞ」
「お前見たいに露骨に危ないってのより、まだましかもな」加藤が言った。
「あっ、そうそう。近くの得意先まで行くんだけど、チャリンコ貸してくんないか？」と加藤。
「どうぞどうぞ。使って下さい。会社の物置に入れてありますから、皆さんも御自由に使って下さい」
暫くして加藤が戻って来た。
「いや～久し振りにチャリ乗ったら気持ち良いな」
「俺もちょっと借りようかな」と羽賀が物置の前に行くと自転車が置いてあった。
「ダメだな加藤さんは、ちゃんと物置に仕舞っておかないと盗まれちゃうだろうに」と独り言を言いながら自転車に乗って得意先へと出掛けて行った。途中、見知らぬ男性に止められた。
「あっ！俺の自転車！」
その男性が言うには、昨日家の前に止めて置いて盗まれたとの事だった。
「ほらここのキズ、間違いなく俺のだ」と言う男性。
「だからこれは、うちの会社の女子社員のだって」と二人で言い合いをしていると山本が通りがかった。
「何してるんすか？」
「おお、山本か、お前からも言ってやってくれよ。この人何か勘違い・・・あれ？それって誰の自転車だ？」
山本が乗ってる自転車を指さして羽賀が言った。
「羽賀さんこそ誰のっすか？そのチャリンコ」