会社での昼休みに弁当を食べながら羽賀が山本に言った。
「今週の日曜日って空いてるか？」
「別に予定は無いっすけど」
「それじゃよ、札幌行かないか？」
「えっ？何かあるんすか？」
「うん、ゴルフ用品がメチャ安い」と言って何処から手に入れたのか、羽賀はあるゴルフ用品店のチラシをズボンのポケットから取り出すと、机の上に広げた。
「おっ、メーカーによっちゃ半額以下のもあるじゃないっすか」と驚く山本。
「そうなんだ。これはガソリン代掛けて札幌行ってもお釣りが来るぞ」
「いいっすね。行きましょうか」と乗り気の山本。
「今なら高速もタダだし、絶好のチャンスだよな」
日曜の朝早くに店の開店時刻に合わせて札幌へと向かった。目的の店には開店の二十分程前に着いたが、もう既に何人かが並んでいた。店の裏にある駐車場へ行くが、満車で入れない。仕方なく駐車場の入り口付近に車を止めて、人の列の最後尾に二人は着いた。
やがて間もなく店のシャッターが開き、二人はお目当ての商品を買う事が出来た。
「いや～ホント安かったっすね」と大喜びの山本。
「だろ～っ、でもお前買い過ぎじゃねえか？それ」
「せっかく札幌迄来たんだし、これくらい買わなきゃ損でしょ。現金だけじゃ足りなくてカードまで使っちゃいましたから」と二人で楽しく会話をしながら車まで行くと、何やら車に紙が貼ってあった。
「ゲッ！駐車違反」
「まだ違反金を払ってもお釣りが来ますよ」と山本。
「そ、そうだな」と変な理屈をこじ付けて納得する二人。
その後、駐車違反の事はすっかり忘れ、楽しく昼食をとって二人は札幌を後にした。
その帰り道での出来事だった。ノロノロと走っている車を追い抜き、カーブに差し掛かった時、突然パトカーのサイレンが鳴り響いた。
羽賀が車を路肩に止めて山本に聞いた。
「まだお釣り来るかな？」
「う～ん微妙なとこっすね」