求人君

北海道【札幌・旭川・函館・苫小牧・釧路・帯広】のお仕事探しに求人君
最終更新日:2024年03月29日
最終更新日:2024年03月29日
TOP  > KonなんどうでShow!  > 第258話 「写真選び」

第258話 「写真選び」

祖父が何やらごそごそと部屋の片付けをしている。
「俺が死んだらこの写真使ってくれ」と言ってアルバムに貼ってある一枚の写真を指差して僕に言った。
「どれどれ・・・。こっちの方が良いんじゃないの?」と僕が違う写真を指差した。
「いや、それはダメだな」
「どうして?にっこり笑って優しそうだよ」
「いや、笑い過ぎだろ。もっと真面目な顔してなきゃ」
「でもこれって若過ぎでしょ。何年前の写真なの?」
「三十年か四十年前かな」
「だろ~。だってほとんど今と別人だもん」
「お前は失礼な事を言うね。ほとんど変わらんだろ」
「いやいや、だって髪の量からして全然違うから」
「お茶入れたから飲まないかい」そこに母が加わった。
「あんたどの写真が良いと思う?」と母に聞く祖父。
「そうね、これなんか良いんじゃない?」僕が選んだ写真と同じ物を母も選んだ。
「ほら、やっぱり俺と同じだ。これが一番良いよ」と言う僕を無視して祖父は自分が選んだ写真を見せた。
それを見て大笑いする母。
「いくら何でもそれは若過ぎでしょ。爺ちゃん」
「・・・もう頼まん!」と言って立ち上がった時、親父が外から戻って来た。
「こいつは俺の息子だし、俺の気持ちを分かってくれるはずだ」と言って親父にアルバムを見せた。
「これだな」それは僕と母が選んだ写真だった。ガッカリしながら、今度は自分の選んだ写真を見せる。
「そりゃ、詐欺だろ。全然今とは別人だ」親父の言った言葉に肩を落とす祖父。
「・・・あっ、今から葬式様の写真を撮れば良いんだ」と言って祖父は急にスーツに着替えだした。
庭のもみじをバックに写真を撮る。バックは関係ないと言ったが、気分の問題だと言う。
「でも、何か寂しいよな。紅葉の時期って・・・よし、来年の春にする。新緑の頃が良いな。春は希望に満ち溢れる季節だしな」
「葬式用の写真撮るんじゃなかったっけか?」と親父。
祖父の様子を見て母が言う。
「何だかいつの間にか希望に満ち溢れちゃったよ」

エリア
カテゴリ
こだわり
雇用形態