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最終更新日:2024年04月19日
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第262話 「初めての料理」

今日は日曜日、時計を見ると朝の六時だった。普段なら、まだぐっすりと眠っている時間帯だったが、リズムの悪い包丁がまな板を 叩く音で眼が覚めた。
こんな朝早くから誰だろうと思い、音のする方へ行ってみると、祖父が台所で人参を切っていた。
「何してんだ?爺ちゃん」
「おお、休みなのに随分と早起きだな」
「早起きじゃないよ。うるさくて眠れないだろ。それに何作ってんの?こんな朝早くから」
「昨日な、隣りの爺さんがラーメンをご馳走してくれてよ、俺も作ってみようかと思ってな、これからスープを作るとこなんだ」
「男子厨房に入るべからずって言ってたのに、どうしたんだよ」
僕は大きなあくびをしながら言った。
「これからは、男だって料理の一つぐらい作れんきゃだめだ」
「やっと少しは考え方が今の時代に追いついたってとこだな。でも危ないよ、ほら人参抑えてる指、そんなに指を伸ばしてると切っちゃうよ。ほら、こうして指の間接を少し曲げてさ」と言いながら僕は人参を少し切って見せた。
「お前、なかなかやるな」
「いやいや、これくらい常識だから。爺ちゃん」
「何?何なの?」
母が起きて来た。母にラーメンの話をした。
「爺ちゃん、お湯を先に沸かしちゃダメだよ。スープは水から作らなきゃ」と母。
「ほらまた指が伸びてるよ、危ないって」と僕。
「あ~っ、うるさい奴らだな。俺の好きにさせてくれ。
今日の昼は美味いラーメン食わせてやるから楽しみに待ってろ。だからお前ら寝ろ!うるさくてかなわん」
昼食は祖父の作ったラーメンだった。指にはカットバンが巻いてある。状況を知らない親父が一口食べてから驚いた顔をして言った。
「これどうしたんだ?誰がどうやったらこんな味になるんだ?」と親父。
「おお、どれどれ、そんなに美味いか?」
と言って口をつける祖父だったが、その日以来台所に立つ事は二度となくなった。

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