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最終更新日:2024年03月29日
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第276話 「面接の日(3)」

女子社員は私の足元にスリッパを置くと、またも薄ら笑いを浮かべている。感じの悪い人だと思いながら長靴を脱ごうとして驚いた。全身から湯気が立ち上る思いだった。私が履いていたのは、膝の上まである主人の黒い長靴だった。主人が会社へ行っている間に除雪をする時は、いつもこの長靴を履いていた。大きくて履きやすくて暖かい、私の大好きな長靴だった。昨日、雪が降って除雪した時に玄関の隅に置いておいたのだが、無意識のうちに、履いてしまった様だ。習慣って怖い・・・。こんなにビシッと決めてるのに、足元が男性用の長靴だなんて。やがて担当者であろう男性がやって来て私を応接室へ通すと履歴書の束をペラペラとめくりながら言った。
「田中さんの履歴書が来てない様ですけど」
「履歴書は持って参りました」と言って私は机の上に置いた。
「履歴書送付後に面接って事になってるはずだけどね」
「求人広告には履歴書持参って書いてありましたが」男性はQ-jin君を広げると広告を指差して言った。
「ほら、ここに書いてあるでしょ」確かに書いてある。見落としたのだろうか?私に限ってそれは絶対にありえない。でもここで突っ張る訳にはいかない。
「すみません。私が見落としてた様です。出直した方がよろしいでしょうか?」
「いや、ちょうどこの時間滞は空いているので、面接しちゃいましょう」臨機応変に対応できる人の様だ。
「ありがとうございます」そう私が言うと、面接が始まった。私の履歴書に一通り目を通し終わると、仕事内容の説明が始まった。話を聞いている内に募集内容と違う事を話し出した。
私は事務の仕事をする為にこの会社へ面接に来たというのに、この人は、営業の話をしている。仕事の説明が一通り終わると、私は疑問に思っている事を聞いた。
「募集している仕事って営業なんでしょうか?」
「えっ?そうですけど」狐に摘まれた様な顔をして面接担当者は言った。

つづく

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