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最終更新日:2024年04月19日
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第295話 「律子さん8」

薔薇の茂みに頭を突っ込み、半ケツ状態の私を見て、涙を流しながら笑う主人。その笑い声を聞いてると頭にカッカと血が上って来る。
「ここから抜け出したら離婚だからね!あんたみたいな薄情者とは絶対離婚よ」
「そんなに怒る事ないだろ。もし逆の立場だったら、君だって僕以上に笑うと思うよ」と笑いながら言う主人。
「そもそも、君が僕の嫌いな虫を見せて・・」
「そこでグタグタ言ってないで早く何とかしなさいよ。あんたのお陰でこんな無様な格好してんだから!」
興奮してカッカすると、余計に鼻血が出て来る。私の顔の直ぐ下で、もう時期咲きそうな蕾が、ほんのりと甘い香りを放つ。そこに一滴ポツンと鼻血が落ちる。真っ白な半紙の上に赤いインクを落とした様に、鼻血がじんわりと滲んで行く。薔薇の枝を切ろうとする主人に私が指示をする。
「ダメよその枝を切っちゃ、もっと上で切らなきゃ蕾まで無くなっちゃうじゃない」
「こんな状態で、まだ薔薇の事を気にしてるの?」
「そりゃそうよ。高かったんだから」
「この枝はどうかな?」
私の後頭部にある枝を見て言ってる様だ。
「どうかなって誰に聞いてるのよ!私が目しか動かせないのわかるでしょ。頭を動かすと薔薇の棘でたちまち顔が血だらけよ!蕾は付いてるの?付いてないの?」
「沢山付いてる。良い香りだね」と悠長な事を言っている主人に殺意さえ覚える。
「早くしなさいっての!私の右上にある枝を一本切って、首の辺りにある枝を広げればいんじゃないの?」
「首の所にある枝は二又に分かれてるから、どっちか片方を切らないとダメだ。でも蕾がたくさん付いてるから切ったらダメだろ?」
小一時間掛かり、やっとの思いで抜け出す事ができた。二日後、薔薇は見事なほど満開になった。白い薔薇を見て隣りの奥さんが言った。
「あら、この薔薇変わってるわね。白いだけじゃなくて、薄っすらと赤い染みがあるのね。本当に綺麗ね」
「そ、そうなのよ。何でも新作らしいわ」

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