求人君

北海道【札幌・旭川・函館・苫小牧・釧路・帯広】のお仕事探しに求人君
最終更新日:2024年03月28日
最終更新日:2024年03月28日
TOP  > KonなんどうでShow!  > 第299話 「律子さん9」

第299話 「律子さん9」

 私は仕事中に無駄なお喋りをしない。間違い無く完璧に仕事をこなす為だ。それなのに、ここの職場と来たら、やたらと無駄口を叩く連中が多い。夕べのドラマがどうの、どこどこのレストランの何々が美味しいだの、仕事に関係ない話ばかりしている。私の上司も他聞に漏れず、その輩の一員である。
「70年代にさ、ボーリングブームがあって女子プロボーラーで中山律子って言う人が居たの知ってるか?」
知らないと答える田中好子。
「その人、CMにも出ててな、律子さん~律子さん~中山律子さん♪って歌が流行ったんだ」変な歌まで歌い出した。楽しそうに笑いながら聞く田中好子。
「そうなんですか、そんなに流行ったんですか。あっ、律子さんって旧姓は何て言うんですか?」
「中山だけど」
「・・・・」一瞬周りが沈黙した後に笑いが続く。
余りにもの偶然に皆が驚くのも無理はない。
「律子さんのお父さんも、きっとファンだったんじゃないですか?」と田中好子。
「そんな事ある訳ないじゃない」真面目だけが取り得の父がそんな安易な気持ちで自分の子どもに名前を付けるはずがない。
「そうですよね。そんな古い年代じゃないですもんね」と言って笑う田中好子。
「年代は合うわね」
「そ、そうですか・・」
帰宅すると、私は父に電話をした。
「私にどうして律子って名前を付けたの?」
「何だ、藪から棒に!な、何でそんな事聞くんだ」
「そう言えば何で律子ってつけたのか聞いた事なかったなって思って」
「言ったぞ。言った言った」
「そうだっけ?いつ?私、覚えてないんだけど」
「そう言う事は一回しか言わないもんだ!」
「何それ、意味分かんない。何で一回なの?」
「律子は律子だ!」その時、電話の向こうから母の笑い声と共に歌声が聞こえた。
「律子さん~律子さん~。中山律子さん♪」
私は受話器を思い切り叩き付ける様にして電話を切った。

エリア
カテゴリ
こだわり
雇用形態