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最終更新日:2024年03月29日
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第30話 「体罰」

担任の先生が家庭訪問にやって来る度に「悪い事したら遠慮なくひっぱたいて下さい」これが先生に会った時の母親の口癖だった。
実際、先生にはよく叩かれた。廊下に立たされるのは勿論の事、出席簿で叩かれたり、拳骨で頭を叩かれる事もしょっちゅうだった。先生に叩かれた事を親に言うと、お前が悪い事をしたからだと、親にも叩かれた。それでも学校が好きで、先生が好きだった。先生は怒ると怖かったが、普段は優しく、僕等生徒に対しても公平に接してくれ、何か問題があれば一緒になって考え、悩んでくれた。そういう先生に僕等は尊敬の念を抱いていたものである。
「今の教師は可愛そうだよ」
二十年振りに会い、今は定年退職した恩師が酒の席でこんな事を言った。
「子どもを叩こうもんなら、親が乗り込んで来る御時世だもんな。教師と生徒の関係も友達みたいになっちゃって、あれじゃ生徒も言う事なんか聞きやしないさ。聖職とまで行かなくても、生徒からは尊敬される立場になって欲しいもんだな」
「先生、あれは体罰だよな」
笑いながら誰かが言った。
「うん。立派な体罰だ」と笑いながら答える先生。
「お前らの頃は本当に楽しかったよ。俺にとっても良い想い出だ」
この一年後、先生は亡くなった。先生に叩かれた事。古き良き想い出として今も僕等の心の中に残っている。

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