十人十色とは人の性質を言う言葉であるが、顔についても同じ事が言える。
世の中の人間全てが、美男美女ばかりでは面白くない。綺麗な顔の人もいれば、そうでない顔の人もいるし、善人顔の人もいれば、悪人顔の人もいる。顔＝心とは必ずしもならず、悪人役の俳優に優しい人が多いと言われる様に、逆の場合が多い様に思う。
僕の友達Ａは前科何犯と言っても全ての人が信じてしまいそうな悪人顔で、海外に旅行をすれば、空港で必ず別室に呼ばれる。
顔は怖いが、優しい心の持ち主で、動物には人気がある。とくに犬などは、どんな犬でも、直ぐに尾っぽを振って腹を見せる。
「動物って言うのは、人の心の中を見る事ができるんだよ」と言って、いつも満足そうに犬の腹を撫でる。
そんな彼の奥さんが女の子を出産した。
「お前、俺に似てないか心配なんだろ？その点は大丈夫だ。俺には似てないから。でも見たら驚くぞ」
出産祝いを兼ね、子どもの顔を見に友達三人と彼の家へ行き、早速ベビーベッドを覗き込んだ。中には可愛らしい赤ちゃんが、すやすやと眠っていた。咄嗟に友達二人が僕を見て言った。
「あれ？お前に似てるぞ。あらら、目元がそっくりだ」
「だろう。似てるんだよ」
と同調するＡ。
確かに自分でも驚く程よく似ていたが、勿論潔白だ。