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最終更新日:2024年04月12日
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第316話 「律子さん11」

駐車場から会社まで五百メートル程の距離がある。
夏であれば何の苦にもならないが、冬はかなり辛いものがある。私は会社の同僚である田中好子に言った。
「何でこんな遠くに会社の駐車場がある訳?」
「近くの駐車場は、空きがないらしいですよ」
二人並んで背中を丸めながら、小股でちょこちょこと凍った歩道を歩く。吹雪の時なんて、昔見た『八甲田山』の映画を思い出す。
「ここの駐車場なんて空きがたくさんある見たいじゃないの」会社から百メートル程にある駐車場を通り過ぎながら私が言った時、タイミング良くその駐車場から課長が出て来た。
「お早うございます」挨拶の後、私は課長に言った。
「何で課長は私達より近い駐車場なんですか?何か少しずるくないですか?」
「この辺の駐車場は空きがないんで、社員の車を分散して契約してるんだ」
「そんな事知ってます」
「会社ができた当時は、皆一緒の駐車場だったんだけど、段々と社員も増えて来たんで、契約する駐車場も段々と遠くになっていっちゃったんだよ。会社に近くなるほど、勤務年数が長いって事なんだ」
「そうだったんですか。失礼しました」
「良いんだよ。理由を知らないのなら、誰だって、そう思うよな。最近ここも空きができた様なんで、総務に言って何台か移動して貰う様にするよ」
それから何日かして、三台の車が課長と同じ駐車場に移動した。田中好子もその中の一人。一番遠い駐車場には、私一人だけが残った。何だか面白くない。ある日、いつもの様に背中を丸めながら小股で会社までの道のりを歩いていると、常務に会った。
「お早うございます」
「お早う。寒そうだね」
「私だけ一番遠くの駐車場なので・・」
「それはご苦労さんだね。ああそうだ。ここの駐車場、一台分空きがある様だから明日から私の横に停めなさい」ここは会社の直ぐ隣り。
天は私を見放してはいなかった。

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