仕事の帰りに友達三人で居酒屋へ寄った。Ａが本社に栄転という事だったので、ちょっとした送別会も兼ねてといったところだ。
とりあえずビールを注文する。久し振りという事もあり、しばし雑談で盛り上がる。そんな中でＡが言った。
「うちの会社に変わった人がいてさ、本社の人なんだけど会社を八年ごとに変える人がいるんだ。それもクビとかじゃなくて自分から辞めるんだよ」
「辞めた後は同じ業種へ転職するのか？」とＡ。
「それが違うんだ。最初は証券会社で、次に大手ゼネコンで、今がうちの会社」
「八年って随分半端だな。意識してやってるのかな？」と僕が言った。
「本人が言うには、八年で一千万貯めて、二年間好きな事をして暮らすんだそうだ。その内、一年は海外で暮らすんだって」
「何とも羨ましい限りだな。正に理想の生活だ。結婚はしてるのか？」とＢ。
「独身って聞いてる」
「だよな。で、その人今いくつ？」僕が聞いた。
「四十九歳らしい」
「と、言う事は、大卒で入社して二十二か。三十で退職して二年後は三十二で再就職・・って計算して行くと、五十で今の会社を退職する事になるな。今年か」Ｂが言った。
「でも五十で会社辞めて二年後は五十二だぞ、再就職はかなり厳しいんじゃないか？」と僕。
「本社だから東京だろ？何でも仕事はあるさ」とＢ。
「俺としては辞めないで欲しいんだけど・・・」
「何、知ってる人なのか？」と僕が聞く。
「いや、見た事も無い」
「じゃ、何で？」
「二度ある事は三度あるって言うだろ、ジンクスだよ」
「？？？」Ｂと僕。
「彼のいた前の会社は優良企業だったけど、二件とも退職した後に倒産してるんだ」
そんなの偶然だと言って笑うＢと僕。
「うちの会社って時々ニュースでやってるけど、お前ら見た事ないの？」
「あっ！倒産しそうな大手家電メーカーって、そっか、お前んとこだった」とＢ。