私が独身時代にお世話になった大きなトランクが、押入れの奥での長い休息を経てやっと活躍できる日がやって来た。トランクも心
なしか嬉しそう。
私は今回の旅行で必要な物一式と二人分の着替えを入れ、パンパンになったトランクをゆうパックで宿泊先へ送った。
　 旅行当日、飛行機の窓から紅葉で美しく染まった北海道の景色を眼下に眺め、今年二度目の夏を満喫すべく、私達は沖縄へと向かった。
「うわ～っ、まるで真夏じゃん。暑いね」那覇に到着。
飛行機のタラップを降りながら主人が驚いて言った。
空港内で中くらいのトランクを二つ受け取る。
「でも、以外とコンパクトに収まったんだね。荷物」自分の荷物が入ったキャスター付きのトランクを引きずりながら主人が言った。
「もう一つは送ってあるの。あっ、こっちよ」私は到着ロビーの出口を指差しながら言った。
「そっか、なかなか手馴れたもんだね。さすが。でも那覇空港って結構大きいんだね」
「国際線も飛んでるからね。帰りは時間があるから、たっぷり散策しようね」そんな事を話しながら歩いていると、友人と待ち合わせの場所に到着した。那覇から近い浦添に住んでいる玉城(たまき)さん。年齢は五十代後半のおじさん。あまり背は高くなく、どちらかというとポッチャリ系。沖縄テレビで働いている。
「りっちゃん。久し振りですね。相変わらず美しいですね。ちっとも変わらないよ」沖縄の人って素直なところが好き。
「初めまして、玉城です」主人とお互い挨拶をしなが握手をした。
「なかなかのイケメンだね。りっちゃんはメンクイだからさ」と言って玉城さんは大声で笑いながら、いつの間にか私の荷物をゴロゴロと引きずっている。
「北海道はもう寒いでしょう？紅葉の時期ですか？」
「そうですね。紅葉真っ盛りですよ」と主人。
「沖縄は紅葉が無いからさ、羨ましいね」そんな会話をしながら、私達は玉城さんの車に乗り込んだ。つづく