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最終更新日:2024年04月25日
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第362話「律子さん24」

 美ら海水族館へは何度行っても楽しい。時間がいくらあっても足りないだろう。子供の様にはしゃいでいた主人とは、いつの間にか水族館内ではぐれてしまった。久し振りの旅行という事もあって、楽しんでいるんだろう。連れて来て良かったと思う。だが、もうそろそ
ろ集合の時間が近づいて来ている。私は主人の携帯を鳴らすが、まだ夢中になっているらしく、気付かない様だ。とりあえず、私はバ
スの方角へ向かって歩き出した。バス専用の駐車場の中から自分の乗ってきたバスを見つけ、近づいて行くと、バスの乗り口近くで主人の姿を見つけた。どうやら水族館の魚より、若いお姉ちゃんの方が良いらしく、バスガイドと楽しそうに話しをしている。私は脅かしてやろうと思い、主人の背後から静かに近づいた。こちらに気付いたバスガイドに私は笑いながら自分の唇の前で人差し指を立て、シーと言って主人の携帯を鳴らした。主人は携帯を一向に取ろうとしない。
「携帯がなってますよ」ガイドが笑顔で主人に言った。
「いいのいいの。どうせうちのババアからだから。うるさいんだよ。さっきから」
この言葉を聞いた瞬間、私の頭の中で何かがプツンと音を立てて切れた。次の瞬間、私は後ろから主人の襟首をグイっと掴むと、自分でも驚くほどの怪力で主人を自分の方へ引き寄せた。
「くら!今なんてった」主人の顔色が見る見る青くなって行くのが分る。
「何て言ったって聞いてるんだよ!」私は怒声と共に主人の胸元のTシャツを両手で掴むと、及び腰でバスに寄り掛かる主人の体を前後に激しく揺さぶった。
「奥さん、落ち着いて下さい」ガイドが私の腕を掴んで割って入ろうとするが、すぐに自分の手には負えないと感じたのか、バスに向
かって運転手の名前を叫ぶと、加藤茶に似た男性がバスから飛び出て来た。
いつの間にか私達の周りには、人だかりができ、まるで私達をはやし立てるかの様に、イルカショーのイルカ達の鳴き声が駐車場に響き渡っていた。  つづく

 

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