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最終更新日:2024年04月18日
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第364話「律子さん26」

 停泊中の高速船『サザンクイーン』はゆっくりと離岸した後、港から出ると上原めがけて一気に加速を始めた。
船尾からは船の高さより高い水しぶきを上げ、時速七十キロ以上のスピードで波の上を飛ぶようにして海面を走る。
船内にはドカーンドカーンと海面が船底を叩きつける音が激しく響き渡る。少し引きつった顔で主人が言った。
「飛んでるよね。この船」
「そうね、でも今日は海が静かだから、大したことないけど、これが少し荒れると、もっと凄いのよ」
「これで普通なの?船がバラバラになりそうだけど」
隣りの席で私達の会話を聞いていたおばあさんが笑いながら言った。
「どちらからですか?」
「北海道です」と主人。
「えっ?北海道?それは遠くから来たんですね」その後も主人との会話は、以外にも盛り上がっていた。
私は久し振りに来た八重山の景色を見たくて、冷房の効いた客室を出るとデッキ後方にある席へと向かった。
やがて主人も来て私の横の席に座った。
「日本にもこんな綺麗な所があったんだね」と主人。
「そうなのよ。私も初めてここに来た時はそう思った」
「あそこの島は何て島?」
「小浜島よ。NHKの朝ドラで『ちゅらさん』っていう番組があったでしょ、あそこがその舞台になった島」
他にも見える島を色々と説明している内に、目的地である島が見えて来た。
「うわ、ジュラシックパークみたいだ」と密林に覆われた島を見て驚く主人。
「八重山最大の島、西表よ」
「イリオモテ?山猫の居るところだね」
「さあ、着いたわよ」
「着いたって、ここ?このジャングル?」主人の驚きをよそに、船は上原に無事接岸した。
桟橋には、各宿の迎えの人と、島を去る人達が数人立っていた。その中でギターを首からぶら下げ、真っ赤な髪をした男が私達の方にやって来た。眉間に皺を立て警戒する主人。
「お帰り、律子さん。久し振りやな」関西弁の赤髪ギター男は、私の顔を見てニッコリと微笑んだ。つづく

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