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最終更新日:2024年04月19日
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第365話「律子さん27」

 今日から宿泊する『あけぼの館』からの迎えだった。
赤髪ギター男は、結構な頻度で西表にやって来ていた。
「ちょっと荒木ちゃん、どうしちゃったのよ、その頭」
「いいやろ?キジムナーや」キジムナーというのは、沖縄に自生するガジュマルの木に住むという精霊の事で、真っ赤な髪をしているのが
特徴だ。まあ、妖怪の部類にも入る様なので、ちょうど良いのかも知れない。
「どうも、初めまして」しびれを切らした主人が自分から挨拶をする。
「あら、ご免なさい。夫よ」お互い二人は挨拶を交わし、荒木ちゃんの運転する車に乗り込んだ。
「荒木ちゃんいつ来たの?」
「昨日や」と軽自動車のハンドルを握りながら荒木ちゃんは言った。彼も民宿のお客だと知って主人が驚くが、お客がお客を港に迎えに行くなんて事は、この島ではごく普通の事だ。
「家はどうなった?」と私。
「もう親父も諦めたんとち
ゃう?なんもいわへんよ」
確か実家は建設会社で、何度も後を継ぐ様にと父親から言われていたはずだった。
「あんたの八重山病もかなり深刻ね」八重山にはまってしまう事を八重山病と言う。恋の病と似た様なものかも知れない。
「そうやな、今年は三回目やしな」更に今回は一ヶ月間この島に滞在すると聞き、主人が驚く。
「お仕事は何を?」
「フリーターですねん。運送会社の荷物の仕分けしてます。金が貯まると、ここに来とるんですわ」
「正社員なんて無理だよね」と笑って言う私。
「そう無理無理、絶対無理」と、まるで他人事の様に言って笑う荒木ちゃん。
「ここに来る人達はそういう人が多いのよ。普通は仕事の合い間に遊ぶんだけど、この人達は、遊びの合い間に仕事をするんだから」
「この人達って、他にもそんな人が居るの?」と主人。
「ほとんどそんな人よ」それを聞いた荒木ちゃんは笑いながら何度も頷いた。
主人は、なぜギターを持っているのか聞いたが、荒木ちゃんはただ笑っているだけだった。    つづく

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