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最終更新日:2024年04月12日
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第370話「律子さん32」

 荒木ちゃんは、私の号令と共に、フリスビーを追うゴールデンレトリーバーの様に機敏な動作で宮西さん目掛けて駆け出た。
やがて体を水面に投げ出すと、ゆったりとした平泳ぎで海面を進み出した。
「何をちんたら泳いでるのよ!急ぎなさいよ!クロールでしょ!」私の怒鳴り声にビクンと頭を反応させると、今度は見事なクロールで泳ぎ出した。岸からそう遠くない場所で溺れていた宮西さんを、荒木ちゃんは無事救出する事に成功した。
荒木ちゃんに支えられ、よろけながらビーチに上がって来る宮西さんの体をバスタオルで包み込む安達さん。
「どうしちゃったのよ。あんなに泳ぎが達者な人が」心配で今にも泣き出しそうな顔をして安達さんは言った。
海水を多量に飲んだ宮西さんは、砂浜に両手をつきゲホゲホと苦しそうに咳をしながら言った。
「水中にあった大きな岩の上で休もうとしたら、滑ってお尻を打っちゃって」その時にパニックになって溺れてしまったとの事だった。
よっぽど痛かったのか、しきりにお尻をさすっている。
私が昔、ここに来た頃は宮西さんが言った岩には、たくさんの珊瑚がついていて、それは見事なものだったが、ここ何年かの海水温上昇の
影響で珊瑚の白化現象が進み、珊瑚が死んでしまった為、ただの岩だけが残ったのだった。浅瀬の珊瑚は今も白化現象が続いている。
少し落ち着いた宮西さんは、荒木ちゃんにお礼を言った。
私は何で平泳ぎをしたのか荒木ちゃんに聞いた。
「癖やな。普段クロールなんて、せえへんもん。疲れるしな。律子さんに言われて初めて気が付いたわ。自分が平泳ぎしてんの」
その時だった、海の方から主人の声がした。見ると、ラグビーボールほどの大きさのシャコ貝を嬉しそうに頭の上に掲げていた。
「あっ、あの岩・・」と宮西さんが言ったと同時に主人とシャコ貝が消えた。
事の成り行きを四人がじっと見守る。次に水飛沫がバシャバシャと上がった。私は荒木ちゃんに言った。
「もう一回いい?」つづく

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