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最終更新日:2024年04月19日
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第374話「律子さん36」

 二人乗りのカヤックは初心者である主人が前に乗り、経験者である私が後ろに乗って舵をとった。
他のカヤックは宮西さんと玉城さん、武田ペアとチョミカ夫婦、そしてガイドの碇君。カヤックは全部で五艇。白浜の港を出て「水落ちの滝」のある川へとカヤックを進めるのだが今日は少し波が高く、漕ぐ手を休めると、カヤックは直ぐに岸の方へと引き戻される。そんな時、南国特
有のスコールが降り出した。大粒の雨粒が海面を叩きつけ、水飛沫と雨が海上で混ざり合って靄がかかった様な景色に様変わりした。
「なんか罰ゲームみたいだよな」主人が笑いながら言ったその瞬間、右側の海面から銀色の巨大な物体が私と主人の間に物凄い音を立
てて飛び込んで来た。バタバタと尻尾をカヤックに叩きつけ、もがいている。私も一瞬何が起きたか分からなかったが、気がつくと、尻尾を握りしめ、オールでガンガンと頭を叩いていた。
「サメ?サメか?」主人が半身の状態で後ろを見ながら情けない顔をして言った。
「ガーラよ」私はぐったりとして息絶えた魚の尻尾をよいしょと持ち上げて主人に見せた。60センチ以上ありそうだ。アジの仲間だと私が言うと、驚いた顔をして見る主人。
側に寄って来た碇君も意外な珍客に驚いた顔で言った。
「お昼に皆で食べましょう」と言ってガーラを私から受け取ると、保冷剤が入った自分のカヤックの荷物入れにしまった。雨はいつの間にか止み、ギラギラとした太陽が再び顔を出していた。
河口付近の陸地に上陸すると、私たちは碇君が料理したパスタとガーラの刺身とフライを食べた。中でも宮西さんが良く食べた。
「今日の食事は最高ね。アンちゃんも来れたら良かったのにね」と友達の安達さんのことを気遣った。
「安達どうした?」と言う武田さんに安達さんでしょ。とさり気なく言うジョン。
昼食を終えると、私達は静かに流れる川面をゆっくりと遡上し始めた。
明日は西表最終日、水面にに映った主人の顔はどこか寂し気だった。  つづく

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