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最終更新日:2024年04月25日
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第390話「律子さん41」

中古車屋に着いて間もなくして主人の携帯が鳴った。
仕事で急用ができたらしい。
「ちょっと行って来る。免許は持って来た?」
「持ってるはずないでしょ。あなたの車で来たんだし」
その時、私の肩越しに彼女が恐ろしい事を言った。
「私が車で送ってあげるよ」
「冗談はやめてよ!何で私があんたの運転する車に乗らなくちゃならないのよ!」
「いや、そうしてくれないかな、こいつも久しぶりの運転だから、ちょっと心配だしさ」と主人。
「私の事は心配じゃないっていうの?」
「君が横に乗って色々と指導してやって欲しいんだよ。安全運転の心得っていうやつをさ、だって君は免許を取って以来ずっと無事故無違反なんだから」
「凄いお姉さん。そうだったの?尊敬しちゃうな私」と彼女は拍手をしながら驚いた顔で私を見つめた。
「ま、まあね。運転には少し自信があるのよ」
「是非ともご指導のほどを」と言って彼女はペコリと頭を下げた。
私と彼女は主人を見送ると、買ったばかりの車に乗り込んだ。エンジンがかかるとほぼ同時に車が物凄い勢いでバックした。予想外の動きに私と彼女の首が人形の様にガクンと下にうなだれる。
「あれ?Rって前進だよね。ランのRじゃなかった?」
「前進はDよD!ドライブのD!ちょっと、ブレーキ踏むのは右足でしょ!なんで左で踏んでるのよ!」
家までは十キロ位の距離だったが、私にとっては百キロにも感じた。
家の前でエンジンが止まると、初めてシートに背をつけた私は、ぐったりとして言った。
「あんたのせいで咽が痛い」
「お姉さん、はしゃぎ過ぎ」
「誰がはしゃいだのよ!ここに着くまでに何回ぶつかりそうになったと思ってるの!脇の下なんか汗でベトベトじゃない!」
この日から彼女の車は我が家で預り、主人の許可が下りるまで毎日練習をする事になった。
一ヶ月近く特訓したら、主人の体重が三キロ減った。勿論あの日以来、私は二度と彼女の運転する車に乗るつもりはない。

 

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