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最終更新日:2024年04月19日
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第399話「バスの中の観客4」

次にバスが停まると、決まりが悪そうな顔で鈴木の友達は降りて行き、立ってる客は鈴木一人になった。
「お前○○高なら大学行くんだろ?恋愛ごっこも良いけど、ちゃんと勉強しないとダメじゃね?」いきなり僕の後ろの席から声がした。
振り向くと鼻にピアスをした20歳前後の男が鈴木を見て言った。
鈴木はこの男の全身を舐めまわす様に見てから、軽蔑する様な眼差しで言った。
「あなたに言われたくない」
「そうだよな。まあ、俺も人のこと言えたガラじゃねえけどな。学生の頃にもっと勉強しときゃ良かったって今じゃ思ってっからよ」
「それにもっと友達を選んだ方が良いかもね。さっきの男の子は、あなたを見て楽しんでる様じゃない。友達ならこういう時にビシっと言える人じゃなきゃ」と通路を挟んだ僕の向かいの席から大きなお腹の女性が鈴木の背中越しに言った。
「この先の高校生活が嫌な思い出になってしまってからじゃ遅いんじゃないか?」流れに乗って僕まで言う。
「そうよ、学生時代の思い出こそ宝物にしなくちゃ」と前の席の先生が言った。
「俺さ、先生が今までで最高の先生だと思ってる。先生が言う言葉って重いよな。中学も高校も先生みたいな人に出会わなかった」
「何言ってるの、ここに居てあなたに声をかけた人達も先生じゃない。見ず知らずのあなたの事をちゃんと指導してくださるんだから。ねえ、青木啓介君」
「ゲッ!ばれてた」僕の後ろの席のピアス男が声を上げた。それと同時にバスが停まりドアが開いた。
「こらからは悔いの残らない高校生活を送れる様に努力します。ご指導ありがとうございました」と言って鈴木は僕等に深々と頭を下げるとバスを降りて行った。
次で僕が降りると男が後ろから声をかけて来た。
「どうです?これから一杯飲みません?何かこのまま家に帰るのはもったいない様な気がして」
「君の先生は?」
「今日はダメみたいです」ピアス男は人懐っこい顔でそう言った。

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