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最終更新日:2024年03月28日
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第400話「初めての携帯」

祖父が老眼鏡をかけ、何やら気難しい顔で携帯の画面をじっと見ている。
「爺ちゃん携帯買ったの?」
「年寄り用の携帯を買ったんだ。店員の女の子に教わったんだけど、分からんくなっちゃった」祖父は老眼鏡をおでこの上に上げると、教えてくれと言った。
「だいたい、携帯を爺ちゃんが使う事ってあるの?」
「隣りの爺さんが持ってて俺が持ってないのはおかしいだろ」何とも変な理由だ。
「お前の携帯は何番だ?」僕が番号を言うと、メモに書き始めた。
「なんか面倒だな。携帯の番号は長いから覚えにくい。これじゃ、このアドレス帳は携帯と一緒に持ち歩かんとならんな」
「何言ってんだよ。相手の電話番号を携帯に登録しておくんだよ」僕は操作方法を教えると、かなりの時間をかけて祖父は、数件の電話番号を登録した。
「メールはどうやるんだ?」
「おっ、凄いなメールなんて言葉知ってるんだ」
「お前、俺の事をバカにしてるな。さすがにメールぐらいは知ってるぞ。要は手紙みたいなもんだろ?」
「まあ、そんなとこかな」
僕は祖父のアドレスを取得すると、僕の携帯からメールを送ろうとした。
「いつ着く?」と訊く祖父だが、言った傍から携帯が鳴り、びくりと驚く。
「近いから早かったのか?」
「電話だって遠くにいても直ぐつながるだろう」
翌日、会社にいると祖父からメールが届いた。
(前略 めっきり寒くなった今日子の頃医科がお過ごしでしょうか。私は寒さにもめげず、まずもって元気であります。草々)帰宅すると祖父が嬉しそうに言う。
「無事着いたか?変換を間違ったな。送ってから気がついた」と言って笑う。
「笑ったよ。でもちょっと硬いけどね」
「手紙だからちゃんと書かなきゃと思ってな」
翌日会社に出社して携帯を忘れた事に気付くが、取りに帰るのも面倒なので、その日は携帯なしで過ごした。
家に帰ると祖父が言った。
「携帯忘れてるってメール打っといたけど見たか?」

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