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最終更新日:2024年04月19日
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第409話「叔父27」

インターホンがなった。
液晶画面いっぱいに鼻の穴が二つ映っていた。
「俺だ、俺」叔父の声だった。僕は早速玄関のドアを開けると叔父を迎い入れた。
「寒いな~。今日は一番しばれるんでないか?」叔父は、白い発砲スチロールの箱を抱えている。
「こんばんは。おじゃましますね」叔父の後に叔母が続いて入って来た。
箱の蓋を取ると、巨大な毛ガニが二匹入っていた。まだ生きている。
「随分立派な毛ガニだね」僕が驚いて言う。
「この手のカニはみんな築地に行っちゃうんだ」
「何でこっちには出回らないんだろう?」
「売れないんだろうな、高過ぎて」妻が大きめの鍋でお湯を沸かし始めた。
暫くして叔父はカニを一匹捕まえると、ナンマンダブと言って鍋の中に入れた。
次に二匹目、叔父がナンマンダブと言って手を離した瞬間、カニの片側の脚が鍋の縁に引っ掛かり、熱湯の中に入るはずだったカニは、IHの上にぼとりと落ちると、もの凄い勢いで走しり出し、床の上に転がり落ちた。
叔父が慌ててカニを捕まえようとするが、カニはバタバタとフローリングの上を横に駆け出すと、冷蔵庫と壁の隙間に入り込んだ。
「往生際が悪すぎやしないか」叔父はそう言うと、クイックルワイパーの柄の部分を使ってカニを引き摺り出した。そして一匹目と同じ様にナンマンダブと言って鍋にカニを放り込んだ。
「鍋が小さいんじゃない?三匹入る?」叔母が言った。
「三匹?二匹じゃないの?」僕は叔母に向かって言った。
「そうだ、三匹入ってたはずだな」叔父が言った。
叔父と叔母が懐中電灯を持って車内を探すが見つからない。そうこうしている内にカニが茹で上がった。
爪の先までぎっしりと身が入ったカニは文句なしに美味しかった。
次の日の日曜日、僕は外に出ようと玄関の戸を開けると、そこには脱走した毛ガニが居た。カチンコチンに凍っていた。
僕は鍋にお湯を沸かすと「ナンマンダブ」と言ってカニを入れた。

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