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最終更新日:2024年04月19日
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第403話「忘れかけた記憶」

祖父がベランダ越しに空を見上げながら言った。
「台風が来るな。今度のはかなりでかいな」この祖父の言葉で僕が子供の頃の忘れかけていた記憶が蘇った。
「爺ちゃんさ、俺がまだ小さい時に同じことを言ったことがあってさ」
「同じこと?」
「うん、台風が来るって。でも、よく聞き取れなかったのかな。大鵬が来るって聞こえたんだ」
「たいほうって相撲取りの大鵬か?」
「そう、それで大鵬が来たらどうなるの?って聞いたらさ、木は倒れるし、屋根だって剥がれるかもしれんって言ったんだ」祖父は大笑いしながら聞いている。
「大鵬が来て暴れていくんだと思ってた。相撲取りで身体も大きいから、暴れたらメチャクチャになるんだろうと思ってた」僕の話を聞いて、祖父は懐かしそうに笑顔を浮かべて言った。
「ああ、それでか。俺がテレビで相撲を見てたら、よくお前は、大鵬来ないよねって言ったな。お前は大鵬が好きで、地方巡業に来るのを楽しみにしてそう言ってるんだと思ってた」
「それでさ、爺ちゃんはその内に来るだろうって言ったんだ。いつ大鵬が来るのか考えただけで怖かった」
「お前もそんな可愛らしい時があったんだな」
「でも結構悪い事もしたな。よく爺ちゃんに怒られた」
「あまり記憶にないけどな」
「ほら、爺ちゃんが大事にしてた日本刀で、裏の雑木林で遊んでたら疲れちゃってさ、そのまま忘れてたら、春になって地面に突き刺さった錆びだらけの日本刀が出て来た事もあったっけ」
「お前が持ち出したのか?」
「そうだよ。親父が見つけて慌ててたっけ」祖父は何かを思い出した様だった。
「それで何処にやった」祖父の顔色がさっと変わった。
「えっ?どこって・・・覚えてないな。親父が処分したんじゃないの」
「お前ら何十年も親子して俺の事を騙してたんだな」その時、タイミングが良いのか悪いのか、父が外から戻った。祖父は父を睨みつけると大声で怒鳴った。
「お前!俺を騙したな!」

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