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最終更新日:2024年04月25日
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第404話「カゴの中」

今日は、妻が会社の飲み会で帰りが遅い。たまには自分で夕食を作ってみようと思い、仕事帰りにスーパーへ立ち寄った。
よく妻に何が食べたいかと訊かれ、何でも良いと答えると、そういうのが一番困るって怒られる。
そんなやり取りを頭の中で思い浮かべ、自分自身に何が食べたいかと問うが、答えは一緒、何でも良い。
買い物客の中には、僕と同じ様にスーツ姿のサラリーマン風の男性が何人か、カゴを持ってうろうろしている。中を見ると、殆どの人のカゴには半額の札が貼った弁当や惣菜が入っている。
そんな中、バラエティーな食材が入ったカゴを持ち歩く男性がいた。中には玉葱、人参、ジャガイモ、豚肉が行儀良くカゴの中に鎮座している。おそらくカレー?いや、シチューか?
その時、男性の知り合いらしき男性が声を掛けた。
「今日はカレーですか」
「いえ、肉じゃがを作ろうと思って」そっか肉じゃがか、でも肉じゃがと言えば、男性が女性に作って欲しい料理ランキングの一位だ。男が作るのはピンと来ない。
「もう三年くらい経ちますかね・・・」相手の男性が少し訊きずらそうに言った。
「いえ、女房が死んでから五年です。早いもんですよ」更に男性は、カゴの中を見ながら言った。
「息子が肉じゃがを食べたいって言うんですが、女房の様にはいかなくて」そういう事か。
スーパーのカゴの中にも人生があるのだ。
夕食に何を食べるか精肉コナーで決定した。カゴの中に食材を入れてると、見知らぬ初老の男性が僕の横でポツリと呟いた。
「すき焼きですか」急に声を掛けられ、僕は少し驚いたが、ええと答えた。
「すき焼きに大根を入れると美味しいですよ」
ゴトゴトと煮詰まってきた汁の中に大根が少しだけ顔を出してる場面を想像する。確かに旨そうだ。初老の男性のカゴは空っぽだった。
「何を食べたら良いか決まらなくてね。何でも良いって思ったらダメなんだよね。今になって女房の気持ちが良く分かりますよ」

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