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最終更新日:2024年03月28日
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第405話「律子さん43」

今日はジョギング最終日。
私は冬には走らない事にしている。道路が凍って危険だからだ。転んで頭でも打って動けなくなったら、これからの季節は間違いなく凍死だ。健康の為に命を失っては目も当てられない。
私は、ニット帽を深めに被り、両サイドを親指で摘んで耳まで引き下ろすと、手袋をはめ、まだ日が昇りきらない薄暗い外へ向かって走り出した。
2キロ程の道のりを走っている途中から太陽が昇ってくる。日の光を浴び、全身がポカポカしてくると、太陽って有り難いものだと、この時いつも思う。
コースの半分近くを過ぎた頃、黒いスニーカーの片方だけが転がっていた。
不思議に思い、目線を前方へ移すと、すっかり茶色くなってしまった舗道わきの雑木林の中から、足が二本ニョキッと突き出しているのが見えた。こりゃ大変だ。
私は速度を上げた。目的の足の手前で私の両足は突如、まだ顔を出して間もない太陽に吸い寄せられる様に空高く放り出された。
昨日降った雨が凍ってブラックアイスバーンになっていたのだ。両足を上げ、L字型の状態でお尻から舗道に叩きつけられた衝撃で、右のスニーカーがどこかにふっ飛んだ。いきなり冷たい空気にさらされた右足は、アンメルツを塗った時の様にスウスウとした。
気が付くと私は、雑木林から舗道に足を突き出す格好で倒れていた。なぜスニーカーが落ちていたのか、なぜ足が二本雑木林から飛び出していたのか、私自身が体験する事で全てが明らかになった。という事は、今は雑木林から足が四本出ていることに。
その時、直ぐ隣の方で枯れ草が音を立てた。
「大丈夫ですか?」と人の声がした。私は何とか立ちあがり、枯れ草を掻き分けると、そこには初老の男性が倒れていた。男性は身体が動かないと言った。救急車を呼ぼうにも携帯を持ってない。私は痛いお尻をおさえながら靴を探し、近くの民家を訪ねて事情を説明した。
すると男性と同じ年頃の女性が驚いて言った。
「それ、家のお父さんだ」

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