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最終更新日:2024年04月25日
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第416話「澄んだ空気」

昨日の夜、友達のAから僕が貸したCDを返したいとの電話があった。
Aのマンションは僕の会社の近くにあったので、退社後、僕はマンションへと向かった。
到着すると、パトカーが一台停まっていた。僕はその横を通り過ぎると、地下駐車場に車を停めた。
エレベーターに乗り、マスクをするとAの住む七階のボタンを押した。
独身貴族と自称するだけあって、なかなかの所に住んではいるのだが、ここに来ると僕は、何時も例え様のないジレンマに陥る。
部屋の前に行くと、Aの部屋はドアが開いていて、中に警察がいた。
何事かと僕が驚いていると、「空き巣に入られちゃって」Aは苦笑いしながら言った。
事件の内容はこうだった。
Aが会社から帰宅すると、玄関のドアが開けっ放しになっていて全部の部屋の窓が全開になっていたそうだ。
泥棒の奇妙な行為が僕には痛いほど良く分かった。
「窓は自分で開けたのを閉め忘れたのでは?」警察が不思議そうな顔で訊いた。
「真冬に窓は開けませんよ。でもそのせいで今日は部屋の空気が随分と澄んでいます」Aは犬の様に鼻を突き出し、クンクンと鼻を鳴らして空気を吸い込んだ。
Aの言葉に僕は恐る恐るマスクを外す。臭くない。部屋の空気を少し吸ってみた。冷たい空気が鼻孔をつき、肺の中へと入っていく。確かに空気は澄んでいる様だ。
「被害はCDが五枚という事ですね」警察が言った。
「それって・・」僕が言うとAは済まなそうに言った。
「ご免、後で弁償するから」
警察は足の踏み場もない部屋をじっくり見渡すと、改めて驚いた様子で言った。
「それにしても、派手に荒らしたもんですね」僕は思わず吹き出しそうになった。
それを見たAは恥ずかしそうに頭を掻きながら言った。
「最初からこうなんですよ」
「えっ?これって荒らされたんじゃないんですか?」
「はい、いつもと変わらない状態です。あえて変わった点といえば、ゴミがちゃんと袋に入れられて密閉されているのと、空気が澄んでいることですかね」

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