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最終更新日:2024年03月28日
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第417話「老いては子に従い」

物置から自転車を出したと言う祖父に、まだ雪があって危ないと父が言った。
「何でもう少し待てない」
「年寄りはな、何時お迎えが来るか分からんのだ。悠長な事は言ってられん」
「事故にでも遭ったらみんなに迷惑が掛るだろ。避けられる事故は避けるに越したことはないんだ」
「そうか、俺が事故にあって寝たきりになったら迷惑なんだな。お前は。はは~ん。そうなると何やかんやと金が掛るからな」
「金とかそういう嫌らしい事を言ってるんじゃない」
「いや、お前は昔っから金に執着するタイプだ。忘れたか?小学二年生の時に千円拾って交番に届けたの」
「何それ?」と言って僕は二人の傍に行き、面白そうな話に耳を傾けた。僕に気付いた祖父は言った。
「一年間持ち主が現れなかったら自分の物になると聞いて、カレンダーを毎日見ながら一年間その日が来るのを待ち続けたんだ。毎日だぞ、毎日ず~っとだ」
「その頃の千円って子供にとっちゃ大金だよな。それで出て来たの?持ち主」
「いや、それで千円はこいつの物になった。子供ながらにアッパレだと思ったよ。金に対する執着心にな」
「その辺にしといたら良いんじゃないか?」と父は不敵な笑みを浮かべて言った。
「いや、まだだ。その時俺がちょっと金を貸して・・・」と言ったところで祖父の話が急に途切れた。
ここから満を持して父が一気に反撃を開始した。
「パチンコする金が欲しくてな、毎回俺にたかるんだよ。倍にして返すからってな。結局一回も返してもらった事がなくて、催促したら男が金の事でグダグダ言うなって逆切れするんだ。正月になるとお年玉を狙うんだ。計算高いだろ?」
「最低の親だな」と僕。
「そっ、そういう昔の事をごちゃごちゃと引っ張り出すもんじゃない!」祖父は顔を赤らめて言った。それを見て父と僕は大笑いした。
「自転車はまだ早いな。まだ雪も残ってる事だし」急に聞き分けの良くなった祖父は、出したばかりの自転車を物置きに仕舞いにそそくさと家を出て行った。

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