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最終更新日:2024年04月25日
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第429話「律子さん48」

私の勤めている会社には、芸能人と同姓同名の社員が二人居る。小林幸子と田中好子の二人だ。
私の隣りに座っている田中好子が楽しそうに言った。
「今日ってお弁当休みの日でしたよね。ランチ一緒に食べに行きませんか?」
「うん、良いよ。何処か美味しいお店でも見つけた?」
「そうなんです。ピザがメインのレストランなんです」
田中好子のその言葉を聞いた瞬間、私は何だか言い様の無い胸騒ぎを感じた。
昼休みになると、私達は早速レストランへと足を運んだ。
そう広くない店内は白を基調とした落ち着いた雰囲気で、お客もそこそこ入っていた。
「律っちゃん、スーちゃんこっちこっち」小林幸子が店の奥の席から手招きをしている。眼鏡が顔の肉に埋まった容姿は、やっぱり小林幸子というよりも小林亜星である。既に同じピザセットを三つ頼んであった。
少しして出てきたピザを見て私は驚いた。前にA子が家に来た時に持って来たピザとそっくりだったからだ。もしそうなら不味いはず。
「どうしたの?そんな怖い顔して」と小林幸子が言った。私は無言で顔を横に振りながらピザを食べた。
「うっそ~美味しい!」
「でしょ?2セットは楽勝だわ」と小林幸子が頬の肉をプルプルさせて笑った。
「店長が変わってから味が良くなったんですよ」田中好子が小声で言った。
「そうそう。それでクビになった店長の奥さんも、亭主に愛想尽かしちゃって、預金を全部持って逃げちゃったんだって」と小林幸子が少し得意気に言った。
まさにA子が言っていた通りだ。どうやらここは、A子の旦那が働いていたお店の様だ。さっきの胸騒ぎの原因はこれだったのかも。
「前の店長さんは?」私はA子の旦那について訊いた。
「何でも、ショックで実家の方へ帰っちゃったらしいですよ」と田中好子。
「どこか、東北の方なんだってね。実家」と小林幸子。
A子が家に旦那が作った不味いピザを持って来たのは、わずか半年前の事だ。こんなにも早く、しかもA子が本気だったなんて思わなかった。   つづく

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