昔はよく、お祭りの縁日でひよこを売っていた。メスは卵を産むので、売りに出される事はなく、オスだけが売りに出される。何度か 親に買って欲しいとせがんだ事もあったが、ひよこのままなら可愛いが、直ぐに鶏になってしまうと言われ、諦めた事があった。
ある日、隣の家の同級生がひよこを二匹買って貰った。『ピッピ』と『チッチ』と言う名前を付け、とても可愛がっていた。確かに初 めは可愛かったが、頭に鶏冠が生え、目つきも悪くなってきて段々可愛いとは言えなくなって来た。明け方と共に「コケコッコ～」と鳴 き出す様にもなり、同級生も怖がって面倒を見なくなってしまった。それからはお爺ちゃんが面倒を見ていた。
二羽のうち『ピッピ』が凶暴で、人の姿を見ると、物凄い勢いで飛び掛って来る。僕も何度か追いかけられた。それを見ていたお爺ち ゃんは、いつも「その内、仇をとってやるからな」と笑いながら言った。
数週間後、隣のお爺ちゃんが、焼き肉を御馳走すると言う事で、家族全員で御馳走になった。何の肉かは分からなかったが、とても柔 らかくて美味しかった。
僕がお腹一杯になったのを見て、お爺ちゃんが言った。
「仇をとってやったぞ。どうだ？美味かったか？」そして、網の上で美味そうに焼ける肉を指差して言った。
「そっちがピッピでこっちがチッチだ」