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最終更新日:2024年04月25日
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第432話「夜のコウエン」

仕事帰りに居酒屋でAとBの三人で飲んだ。
「どうだ?もう仕事は馴れたか?」新しい職場に就いて間もないBにAが言った。
「まだ少し戸惑うところはあるけど、何とかやってるよ。それにしても、人生上手く行かないもんだと、つくづく思うよ」と溜息混じりにBが言った。
「お前は今迄散々家族に迷惑を掛けて来たんだから、もうこの辺で落ち着いた方がいい」Aが言った。
「趣味を生かした仕事をしようとすると、生活が成り立たない。だからって、収入の為に好きじゃない仕事をして、果たして幸せなのか?ああ、趣味を仕事にできたら、どんなに人生楽しいだろう」
「お前の場合、仕事にするといっても需要がない」とAがバッサリ切り捨てる。
「そうなんだよ。俺の魂の叫びを受け止めてくれる奴が居ないんだよ」というBを見てAと僕は笑った。
「高校生の息子が居るんだし、自分自身の夢を追いかけるのは終りだ。今度は子供の夢の為に親として、できる限りの事をするのがお前の務めだ」僕が言った。
「そう、その通り。毎日の練習も、もう終わりにしなきゃな。プロへの道も、もう終わりだ」一見バンドマン風のBは細身の革パンの膝をパシンパシンと叩きながら寂しそうに言った。
「やっぱり毎日練習するもんなのか?」と僕。
「そうだよ。じゃなきゃ感が鈍るし、指の動きも悪くなっちゃうからさ」とBはギターを弾く様に、小刻みに指を動かした。
「これからは、時々仲間と集まって楽しむ事にするよ。趣味としてな。だから仕事の方も頑張らなきゃ」とBは笑顔で言った。
「そうそう、仕事あっての趣味だもんな」とA。
「そこの公園で最後に一発演奏しようと思うけど、どうだ?聴いてくれるか?」Bは帰り際にそう言った。
僕とAは頷くと、三人揃って夜の公園へと向かった。
遠くで微かに聞こえる雑踏の音を背に、人気のない静まり返った公園に、Bのオカリナの音が悲しげに響き渡った。

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