求人君

北海道【札幌・旭川・函館・苫小牧・釧路・帯広】のお仕事探しに求人君
最終更新日:2024年03月29日
最終更新日:2024年03月29日
TOP  > KonなんどうでShow!  > 第44話 「絵」

第44話 「絵」

小学生の頃、絵が上手な友達がいた。勉強は、あまりできる方ではなく、クラスでも目立つ存在ではなかったが、絵の授業では常に皆 の注目の的だった。
普段はとても大人しく、何時も一人だった。僕はそんな彼の事が気になり、よく一緒に遊ぶ様になった。
ある日、彼の家に遊びに行くと、沢山の絵があった。全て彼が描いたもので、彼が将来お金を貯めて、お父さんとお母さんに家を建て た時に、居間に飾るんだと言っていた。確かに彼の家は古いアパートで、決して裕福な感じではなかった。
次の日、彼が絵を持って僕の家にやって来た。
「これあげるよ」
それは彼が一番気に入っている絵だった。
僕が驚いて本当に良いのか聞くと「友達になってくれたから」と照れくさそうに彼は言った。
その後、別々の高校へ進学し、彼とは会うことも無くなったが、高校を卒業する間際、久し振りに再会した。
彼は東京の専門学校で、絵の勉強をすると言った。それが僕と交わした最後の言葉だった。
間もなくして彼は交通事故で亡くなった。
大掃除の日に色褪せた包み紙を開けて、妻が言った。
「この絵、何だか懐かしく感じるね。随分子どもっぽい絵だけど、何か味がある」
僕は妻の横に立つと、一緒に絵を眺めて言った。
「この絵、将来家を建てたら居間に飾るんだ。いつになるか分からないけどね」

エリア
カテゴリ
こだわり
雇用形態