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最終更新日:2024年04月19日
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第453話「マーちゃん34」

雲がすっかりなくなった空に、大きな月が輝いていた。月明かりに青白く光る雪山の間から、お婆ちゃんが玄関先の雪を箒で掃いているのが見えた。
良く見ると、かなり雑な除雪で、至る所に雪の塊が転がっていた。
僕は車から降りるとお婆ちゃんに声を掛けた。
一瞬不審そうな顔をしたが、僕がマーちゃんの名前を出すと、途端に笑顔でこんばんは、と返してくれた。
お婆ちゃんには、今日マーちゃんが言ってた事を話した。
「そうでしたの、それは悪い事をしましたね。私はあの子が一番喜ぶ事をしてあげてるつもりだったんですけど、逆に苦しめる結果になってしまって、あの子に謝らなきゃね。さっき来た子供が今時の子供だと思ってましたから。
マーちゃんの様な純粋な子も居るんだと思ったら、何だか嬉しい」
「さっきの子って、除雪してた子達ですか?」
「そう、しっかりしてるわよ。驚いちゃった。マーちゃんの友達って子が二人来てね、一センチ除雪するのに百円だって言うのよ。
メジャーで測って、二十一センチあるから二千百円だって言うの、私も自分ではできないし、いつもマーちゃんにやってもらうのも悪い気がして頼んじゃったの。
終わったから二千百円払ったら、二人なんで四千二百円だって言うのよ、まあそれでも業者を頼むより、はるかに安かったんで、払おうとしたら、今日は初めてだから二百円はサービスしますって。あれが小学五年生っていうから驚きよね。
またよろしくって言って帰って行ったわ。でも酷いでしょ?お金を取るのなら、もっと綺麗な仕事をしなきゃね」と呆れた顔でお婆さんは笑った。
「今度からは、マーちゃんにやってもらいたいわ。除雪の後、家でお茶菓子を食べながら、年寄りの話し相手になってくれるかしらね」
「マーちゃんはそういうのを望んでるんだと思いますよ」
僕は帰り際、お婆ちゃんにおやすみなさい。と挨拶をすると、大きな月を見上げた。吐く息は白い。今年もまた冬がやって来た。

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