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最終更新日:2024年04月25日
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第462話「鍵・後編」

父は机の引き出しに定規を差し込もうとするが、引き出しが少しも動かないので定規を差し込めずに何度もガチャガチャやっている。
「おかしいな?鍵がかかってるのかな?そんな覚えないしな・・・」父の部屋の開いたドア越しに僕と祖父は、そっと顔だけを部屋に突っ込んで父の背中を見つめていた。
そして父に気付かれない様に、僕らはゆっくりとした足取りで階段を降りて居間に戻った。
「爺ちゃん、どうすんだよ」
「まずい事になったな」
「ゴミ箱にはもう無いかな」
「昨日、燃えないゴミで出しちゃったし」その時、父が階段を降りてくる音がした。僕等は何事も無かった様にソファーに並んでテレビを見ているふりをした。
鍵がかかってると父が僕に定規を返しながら言った。父は昔の写真を整理する為に引き出しを開けたかったらしい。
その時、突然何の前触れも無く祖父が言った。
「鍵は捨てたしな」完全に開き直ってる。これでまた親子喧嘩が始まると思った。祖父の顔を見ると、既に臨戦態勢に入っているが、父からは意外な言葉が出た。
「そうなんだ、この前捨てたんだよ。古い鍵だったからな。最初はどこの鍵か分からなくて、家中の鍵穴を試してはみたけど、結局見つからなかった。だから、もう必要ない
物だと思ったんだ。でも参ったな、机の鍵だったのか。俺の机だけ見逃してたな」さすが親子である。同じ事をした様だ。
その内に何とかすると言い残して父は部屋へと戻った。
それにしてもどういうことだろう?祖父は、あの日の内に鍵はゴミ箱に捨てたと言った。ということは、使途不明の鍵は父が捨てた物と祖父が捨てた物の二つあった事
になる。
「何かあいつ勘違いしてるみたいだな。俺が鍵を捨てたのにな」と祖父は笑う。
でも、父は確か俺の机だけ見逃したと言っていた。という事は、僕の机も祖父の机も確認したという事か?
おそらく祖父が捨てた鍵は父の机の鍵だろう。それじゃ父が捨てた鍵は何処のだ?
その時、祖父の部屋から何やら音が聞こえて来た。
それは、さっき父の部屋で聞いたのと同じ、引き出しを開けようとするガチャガチャという音だった。

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