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最終更新日:2024年03月28日
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第463話「律子さん56」

今日は少しへこんでいる。月に一度の重役会議の準備をする当番だったので、いつもより30分早く出社して準備をしたが、会議は明日だと言われ、みんなから笑われてしまっ
た。昔はこんな勘違いは絶対しなかったのにと思うと、自分が情けなく感じた。
そんな気持ちを引きずりながら帰宅し、薄暗い玄関の下駄箱の上に片手をついてブーツを脱ぐと、何か金属片の様な物がカシャンと音を立てて床に落ちた。下駄箱の上に乗ってい
た物らしい。何だろうと拾い上げ、明かりを点けて確認すると、それは鍵だった。家の鍵の様だが、我が家の物とは明らかに違っていた。キティーちゃんのキーホルダーが付いて
いるのだ。一瞬、主人の妹の物かとも思ったが、どう考えても、キティーちゃんって感じではない。
昨日、拭き掃除した時は無かったので、主人が帰って来てからになる。会社の飲み会があって主人が帰宅したのは、確か11時半頃だった。その時に主人が下駄箱にうっかり置き
忘れたのだ。
最近は、仕事が忙しいと言って帰りが遅いし、先週の日曜日も仕事に出ていた。果たしてそれは本当に仕事だったのか?それに昨日だって本当に会社の飲み会だったのか?
何故急に遅く迄残業する様になったのか?
これらの主人の行動は、私の頭の中を覆う疑念として、霧の様に少しづつ濃くなっていった。
ちょうどその時、携帯が鳴った。主人からだった。
「今日も残業で遅くなるからさ、夕食はいいや」いつになく能天気な声だった。
「そうなの、大変だね。何時頃になりそうなの?」
「10時過ぎかな?」
「でも、何だか随分元気が良いっていうか、楽しそうに聞こえるけど」
「カラ元気だよ。そうでもしてなきゃやってられないからさ」と言って主人はケタケタと笑った。主人が何かを隠している時は、いつもこういった笑い方をする。
「そうだよね。でも、あまり根をつめない様にね」私は携帯を切ると、掌に乗せたキティーちゃんをじっと見つめた。          つづく

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