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最終更新日:2024年03月28日
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第464話「律子さん57」

主人に女の影がちらつく。
このまま知らないふりを続けるなんて芸当は私にはできない。ここはキッパリと白黒付けるべきだ。もしその時主人が相手の女を選んだら?私は捨てられるの?
どう考えても私にそんな役回りは似合わない。女が居ると判明した時点で、私から三行半をつきつけてやる。
気が付くと、私は結婚式の写真を見ていた。私も主人も今とは別人のように若い。当時、美男美女夫婦の誕生だなんて言われたっけ。
一昨年西表島に行った時の写真も見る。主人が股間に付いた小さなサソリに驚いて、谷底に転げ落ちたこと、主人の虫嫌いを克服する為に西表島で長年テント暮らしをしている人の所に一晩置き去りにしたこと、全てが昨日のことの様に鮮明に蘇るのと同時に、写真は段々と涙で霞んでいった。
十時半を少し過ぎた頃に主人は帰って来た。散々泣き尽くした私は妙にサッパリとしていた。鍵を摘んだ右手を高く上げ、ブラブラとキティーちゃんを揺らしながら無言で主人の顔
を見る。
「ああ、それ、今朝君が早く出勤したから行き違いになったんだよ」
「行き違い?誰と」
「サトちゃんだよ」主人は私の母である里子をサトちゃんと呼ぶ。呆れた言い訳に私の声が大きくなる。
「嘘!何でお母さんが家に鍵を置いて行くのよ」
「あれ?覚えてないの?ほら、この前お父さんの全快祝いをした時、今後もしも何かあった時の為にってスペアを一個預る事になったじゃん。それができたんで、今朝サトちゃんが
持って来たんだよ」そうだとすると、これは私の実家の鍵ということになる。
「君、けっこう酔ってたからな。僕は運転手なんで飲まなかったから、ちゃんと覚えてるよ」その時、私はキティーちゃんを見てハッとした。
それは、数年前に京都で私達が母に買った物だった。ここ迄の私の気持ちはどこに収まるのか?怒りに震えるこの右手をどうやって下ろそう・・・。主人には全く罪が無い。私の勝
手な思い 込みがいけなかったのだ。私が100%悪い。主人をもっと信頼すれば良かった・・・。普段は癒されるはずの主人の笑顔も、今日はなぜか無性に腹が立つ。
そんな私の気持ちとは裏腹に、赤い傘をさしたキティーちゃんは、楽しそうにブラブラと揺れていた。

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