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最終更新日:2024年04月19日
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第467話「空気清浄機」

祖父の部屋を覗くと、分厚い老眼鏡をかけ、眉間に皺を寄せた祖父が何かを真剣に読んでいる。
「爺ちゃん。どうした?気難しい顔しちゃって」
「何だかさっぱり分らん」
それは空気清浄機の説明書だった。
「俺の部屋の空気も綺麗にしようと思ってな。ほら、中国からテーピーピ2・5とか飛んで来てるんだろ?」
TPPとPM2・5が混ざってしまった様だ。
「こっち迄はどうなんだろうね。もし飛んで来ててもわずかだろうし、家の中は大丈夫じゃない?」
「備えあれば憂いなしってな。用心に越した事はない」と祖父は再び説明書を読みながら動かないと言った。
スイッチを見ると、自動のランプが緑に光っていたので、強制に変えると空気清浄機は唸り始めた。
「大丈夫だよ。動くじゃん」
「自動にすると動かんのだ」
「それは、部屋の空気が綺麗だから動かないんだよ」
「そんなに賢い・・あっ!これ加湿器じゃないか?」
「そうだよ、加湿器の機能も付いた空気清浄機だよ」
「加湿器も?だって加湿器はそこにあるだろう」
「確かにこの狭い部屋に加湿器二台も必要無いよね」
「だから高かったのか。あの野郎~。俺を騙したな。どうも目つきが怪しかった」
「あの野郎って?」
「店員だよ店員。電器屋の」
「でもさ、その加湿器も結構年季が入ってるから良かったんじゃないの?この際」
「あっ、そうか。加湿器の事言ったら、これを勧められたんだった」
「じゃ、店員は爺ちゃんを騙してなかった訳だ」
「そうだな良い店員だった。頭も低かったしな」言う事がコロコロ変わる。
その時、ブスッブリブリ~っと湿地帯を踏みしめた時に足の裏から立ち上る湿った様な音が部屋中に響いた。
「あら、屁だ。ご免。年寄りは締まりが悪くてな」悪臭が僕の鼻を襲ったのと同時に、空気清浄機が赤いランプを灯し、何かを思い出したかの様に突然と激しく動き出した。
「壊れとらんかったな」祖父は満足そうに笑った。

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